[相当侵食されていると思う、心の奥の奥まで]



「ガイってさ、ホントルークのこと大好きだよね」
「まぁ、な・・・・」

夕食後のひと時。
宿舎の部屋で一人武器の手入れをしていたら「ヒマだから」とアニスがやってきた。俺はほどよく距離をとってもらい手入れを続けながら話をする。

「こういっちゃぁなんだけどさ、ルークのこと恨んでないの?」
「直球だなぁ」
「だって、ソレ」

肩を指差す
シンクにかけられたカースロット
今はもうイオンに解呪してもらったけれど

「それって心のどこかで思ってるんでしょ?」
「んーそうだなぁ・・・」

武器を仕舞い、アニスに向き直る

「忘れたわけじゃない。けど、もう昔のことなんだ」
「よく割り切れるね」
「アイツに教えてもらったんだ」
「昔は昔!って?」
「あはは」

席を立ち、かばんの中へ手入れ道具をしまう。

「自分でもそう思うよ」
「何が?」
「忘れられるはずないのになって」

けれど、もう昔の話なんだ
昔のことだから気にしたってしょうがない

「相当侵食されていると思う、心の奥の奥まで」
「ルークに?」
「あぁ」
「それでいいの?」
「いいんだ。忘れたわけじゃないから」
「ふーん・・・」
「どうしてそんなこと聞くんだ?」
「べつにぃー」

アニスも席を立ち少しだけ自分に近づく

「いつか裏切るのかなと思って」
「それはないな」
「絶対?」
「絶対」
「ふーん」

そんなくだらない話をした次の日
アニスが裏切った
だから聞いてきたのか、彼女も正直だな
裏切ることを攻めるつもりはない。
それがいいと思ったんだろ?
そうしなくちゃいけなかったんだろ?
次の料理当番は自分だ、そうしたら彼女の好物でも作ろうか
小さく、そう思った。







__________________
2012*08*20

お題サイト
リライト
inserted by FC2 system