「土方!」


声が聞こえる
遠くのほうで俺を呼ぶ声が聞こえる。
すこしぼけて誰の声だか判別できなくて
意識もはっきりしないまま思考をめぐらせると
真っ青な空が見えて体が思うように動かない。
体が中に浮かぶ感覚がして

あぁ、俺轢かれたんだ


その日は総悟と巡回にでてあの天パとも出逢って
いつもの巡回コースだったはずなのに
背後から余所見運転のトラックが突っ込んできて
俺はそのトラックに巻き込まれたんだ


俺、死んだんだな
短いけど楽しい人生だったな・・・・




「――――なんていうと思ったかぁ!」

意識を頭に集中してどうにか思考を動かして状況を確認しようと体を起す
体を起すと花の匂いらしきものがした
よくみると自分の下にも赤いバラの花畑が広がっていて
見渡す限り花畑だった
これが俗に言う「花畑」なのかと冷や汗をかきつつも状況を理解していく。

「お目覚めですか?」

懐かしい声色がしてゆっくりと声のほうを振り向くと
懐かしい姿の女性がいた。
彼女はつい最近あの世に旅立った、俺の愛した女性―――ミツバだった

「・・・・・」
「ご気分はいかがですか?」
「・・・ここは?」
「もう、わかっていらっしゃるのでしょう?」
「・・・」
「向こうへ進めば私の今いる世界に」
「もういい」
「・・・」
「俺は死んだのか?」
「・・・・はい」
「そうか・・・」

未練はありますか?小さな声でたずねて来た
未練なんて生きてる頃から作るもんかと必死に毎日を生きてきた。
周りや医者に止められてもマヨもタバコもやめなかったし
隊士たちにはいつも厳しく接してきた
未練があるとすれば残してきた始末書の山。
近藤さんや総悟だけで処理しきれるか不安で

「書類だけじゃなく、真選組そのものじゃないんですか?」

侍として生きてきた
確かに未練といったらそうなのかもしれないが、侍としてそこを引きずってはいけない
死して化けて出るなかれ。そう掟を決めたのは俺自身だ

「でしたら恋人、とか・・・?」
「そんなもんいねぇ」
「好きな人もですか?」
「・・・・お前がそれを聞くか」
「えぇ。私がいなくなった後、十四郎さんは恋をしていたのか気になるじゃないですか」
「・・・いない」
「本当に?」
「何がいいたい」
「このまま死んでしまっていいのですか?」

そのとき、声が聞こえた
遠くで俺を呼ぶ声
ぼやけて誰の声なのかは分からなかったが確かに呼ばれた
声の聞こえたほうを見つめ誰の声だろうかと思い出そうとするけど思い出せない
いったい誰が俺を呼ぶ?

「呼んでますよ」
「・・・・」
「十四郎さん、本当にいなかったのですか?」
「・・・・・」
「じゃぁ誰があなたを呼んでいるんですか?」
「知るか」
「探してきてください」
「あぁ?」

この声は誰の声なのか探してきてください。
私はあなたが幸せになってくれないと悲しいんです

「でも、俺は死んだんだろ?」
「仏の顔も三度まで」
「は?」
「3回だけですよ?神様にも内緒です」
「何が」
「ここまで声が届くってことは相当好きなんだと思いますよ?」
「だから何が」
「この声・・・あなたの事を愛して止まない人を探してきてください」
「・・・」
「でも、十四郎さんニブチンさんですから3回までですよ?」
「おい」
「3回目、間違えたら本当に・・・――――」
「・・・――――」

視界が開けてあたりを見渡すといつもと変わらないかぶき町。

「土方さん?」
「おい、きいてんのか?」
「・・・総悟、万事屋・・・?」

隣には総悟、目の前には口喧嘩をしていた天パ野郎
記憶をさかのぼれば俺はここでトラックに巻き込まれて事故ってあの、

「・・・・・生きてる・・?」
「急に何いって・・・?」
「ついにトチ狂いましたか?死ぬ前に俺に副長を譲るって遺言残してから」
「黙れ」

無意識に自分の両手を見つめて開いたり閉じたりする。
握り締めると冷や汗をかいていたのか少し湿っていて体温が伝わる。
裏返して手の甲ををみると記憶にないバラの刺青があった

「うっわっ趣味悪っ」
「・・・・これ」


さっきまでいた場所は薔薇の花畑だった
そして彼女の言っていた「3回」の意味

その意味を理解するため俺は早足で屯所で帰っていった








___________
原作:「あいはあの世においてきた」です
めちゃくちゃ好みの話で是非原作読んでください
(宣伝とかじゃないんだからね!)
パクリというかパロディというか
設定だけ少し借りたというか←無許可
でも書きたくなったんだもん!
ごめんなさい
2011*03*19








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