屯所に戻った俺はトイレに駆け込み右手のこうにある薔薇の刺青を洗い落とせるのか試してみた
しかし、刺青は落ちることはなかった







「どうなってんだ・・・?」

落ちないものは落ちないと割り切って、あそこで唯一の未練を感じた書類の整理しつつ
タバコをふかす。
書類にサインするたびに目に付く薔薇の刺青。
正直イライラしてくるがどうしようもない。
それにあいつが言っていた「3回」の意味

「・・・3回か・・」

アイツは俺を呼ぶ声の主を探して来いといっていた
つまり、そいつを見つけて来いってことで、チャンスは3回ってことなんだろうか
しかも俺の事が相当好きなやつとも言っていた
もっと話を聞きけばよかったと頭をかく

「副長、失礼します」

障子の向こうから山崎の声がして静かに障子が開く。
追加の書類を持ってきたらしくそれを受け取る

「それと・・・局長なんですが・・・」
「何かあったのか?」
「いえ、いつもの事なんですけど・・・姉御から苦情が入りまして・・・」
「・・・・俺から伝えとく」
「すみません」

書類を受け取り山崎を退出させたあと、書類に目を通し始める。
ほとんどが始末書でしかも総悟関連で本当に頭が痛くなる
デスクの上の書類と見比べながらため息を零し、息抜きをしようと書類を置いて局長室に向かう









「近藤さん、ちょっといいか」

局長室に入ると顔に傷を負った近藤さんが刀の手入れをしている最中だった

「どうした?何かあったのか?」
「・・・・あー・・・その顔の傷は・・・?」
「男の勲章だ!」
「・・・近藤さん、アンタの気持ちを否定するつもりはないが・・・」
「あれ?お妙さんからなんか言われちゃった?」
「・・・・少し、執着しすぎなんじゃないのか?」
「トシ、男の恋は押しの一手に限るだろ」
「・・・」

自信満々に笑顔で返され言葉を失う。
近藤さんがあの女に執着するのは問題ないが、さすがに苦情がくるまで執着されるのはいかがだとは思うのだが。
何分、俺は近藤さんには弱い。
何もいえずに頭を抱えていると近藤さんのほうから謝罪の言葉が入る。

「迷惑をかけてすまんな。しばらくは大人しくしているよ」

困ったように笑みを零して刀を鞘にしまいこむ。

「・・・どうして、そこまであの女に執着するんだ?」

正直そこまで美人ではないし、性格については問題ありだ。
周りのやつらはゴリラ同士お似合いだとか言うやつもいるが、俺には理解できない。
どうしてそこまであの女に、

「・・・俺のほうがアンタを理解してやれるってのに」
「トシ?」
「なんでもねぇ」
「・・・お前には本当に迷惑ばかりかけてるよな」
「俺ぁ別にそんなこと・・・」
「俺はお前がいなきゃここまでこれなかっただろうよ」
「近藤さん・・・」

ふいに手が伸びてきて頭を撫でられる
視線の先では近藤さんが笑顔でこちらを見ていて無性に恥ずかしい気持ちになる

「ありがとうな、トシ」


その笑顔に無性に惹かれて心を奪われた。
胸が高鳴り心臓の鼓動が大きく聞こえる。
鼓動にばれないように静かに手を払いのけ視線を下に落とす

「とにかく、恋愛をもほどほどにしておいてくれよ」

その後はもうひたすら誤魔化す事しか頭になく、そそくさとその場から逃げ出した。
早足で自室にもどりタバコを取り出し火をつける。
煙を一息吸い込みゆっくりと煙を吐き出し、壁を背にずるずると座り込む。

「・・・・」

胸に手を当てて胸の高鳴りを鎮めようと瞼を閉じる。

「見つかりましたか?あなたを呼び止める方」

ふと、懐かしい声がして瞼を上げるとまたあの花畑に来ていた。
そして、彼女も以前と変わらず笑顔でそこにいた。


「・・・チャンスは3回だろ」
「えぇ」
「なんでこんなことしなきゃなんねぇんだよ」
「だって、十四郎さんってにぶいんですもの」
「・・・」
「だから自分の気持ちに蓋をしてしまうんじゃないかと」
「関係ねぇだろそんなこと」
「あなたに幸せになってもらいたいんです」
「別に恋愛しなくても幸せだ」
「誰かを愛することはとても幸せな事なんですよ?私がそうだったように」
「・・・」
「ですからせっかくのチャンス無駄にしないでくださいね」

急に風が吹きつけ視界をふさぎ始める。
腕で風を防ぐが薔薇の赤い花びらが邪魔をして彼女を隠していく。


「その薔薇の刺青が散ってしまったら終わりです」
「おい・・っ!」
「どうか、気づいてあげてください。あの人の声に」











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中途半端なとこできってしまったw
2011*3*28


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