「……」 近藤さんとの一件が終わり、何も考えられなくなった俺は自室で仕事をするわけでもなくただ煙草をふかしていた。 時々山崎が煙草を補充しにやってきたり灰皿を代えたりしてくれていたような気がしたが、どれだけ時間がたったかまでは把握できていなかった。 ふと右手の甲をみると最初をどこか印象が変わった刺青がまだあった。 花びらが欠けて明らかに散ってしまったような、そんな印象をうける刺青。 そういえばチャンスがどうとか――― 「―――あと二回ですよ」 「……またか」 「あと二回失敗したら本当に死んじゃいますよ」 「いっそもう殺してくれ」 「駄目です」 正直ダメージがでかかった。 自分が思っていたより俺は近藤さんが大事で大切で大好きで まさかあの女へと比べられるとは思ってもいなかったが、とにかく今はもう何も考えたくない。 「んでこんな回りくどいことをするんだ」 「あら。鬼の副長さんともあろう方が諦めてしまうのですが?」 「鬼は恋なんてしねぇだろうよ」 「じゃぁ私のことは?」 「………」 「ふふっ。大丈夫、十四郎さんならきっと見つけられますよ」 笑顔の彼女とは違い俺は頭を抱えるだけだった。 どうしてアイツは声の主を教えてくれないんだろうか? さっさと教えてくれればいいものを 「土方ァァァァァァ!!」 声が聞こえて夢から引き戻される。それと同時に体に走る嫌悪感。とっさに刀を構え攻撃に備えているとふすまの向こうから砲弾がやってきやがった。 爆音とともに部屋を撃破しやがったやつは庭先のほうで舌打ちをしつつ撃ちはなったバズーカ砲を捨てていた。 「相変わらずしぶてぇお人だことで」 「てめぇ…ッ」 「あんぱん野郎からのアンタが腑抜けてるって聞いたから殺りにきたんですが…そこんとこどう思います?土方さん」 「とりあえずテメェをぶった切ってからあんぱん野郎をぶった切る」 「おーこわ。俺ぁ元気のない鬼の副長が珍しくて面白半分で見にきたら結構殺れるんじゃないかと思っただけですぜぇ?悪いのは俺じゃなくてあんぱん野郎です」 「お前は殺ることしか考えらんねぇのかよ…」 イライラが収まらずタバコを取り出し火をつける。 破壊された部屋を確認しつつこの処理はどう片したものかと頭を悩ませる。 「…あれ?その刺青・・・」 「あ?」 「前と違う気がしますけど…やっぱり土方さんの趣味悪」 「これはテメェの姉貴が・・・!」 急いで言葉を飲み込み口を塞ぐが遅く、総悟の表情が変わる。 「・・・・姉上が何です?」 一瞬無視しようかと視線を逸らしたが、そうも行きそうになかった。 こちらを見てくる瞳がさっきまでとは違う、誤魔化しきれないと悟った俺はこっちの処理もどう片したもんかと更に頭を抱えた。 「あははははははははッ!」 「……」 場所は変わってファミレス。破壊された執務室で話すよりはこっちのほうが落ち着くだろと出てきたもののどうしたものかと考えて お互いにコーヒーを注文したあと正直にすべてを話してしまった。 俺はすでに死んでいてお前の姉貴に生かされている、と。 けど俺には期限があって本当の愛とやらを見つけなければ死んでしまうということも。 近藤さんの一件だけは伏せたが、刺青の形が変わったことも伝えたところで可愛い顔したあの女の弟の鬼畜外道は腹を抱えて笑い出した。 「あー何を言い出すかと思えば…姉上が…?」 「テメェに話した俺が悪かった。だからとっとと笑い死にしてしまえ」 「いやーまさか土方さんがこんな乙女チックだったとは…ッ」 「いや、もう本当に勘弁してください。死んでください」 笑いのせいで体が痙攣してるわ、あのサディストの瞳に涙がみえるわで本当に、本当に俺は後悔した。 「・・・・本当の愛ですか・・・・へぇー」 「・・・信じるのかよ」 「姉上が言うんだから間違いありませんよ。頑張って本当の愛とやらを見つけてください。妄想狂土方さん」 「数分前の俺に忠告したい、今すぐその口をふさげと忠告してやりたい」」 「本当の愛ねぇ…そんな曖昧なものを探し出すなんてドラゴンボール見つけるより大変じゃないですかね?けど土方さんならきっと見つけ出せますよ、頑張ってくださいね(棒読み)」 「もういい喋るな…!」 注文したコーヒーを一気に飲み干して伝票をひったくり立ち上がる 「仕事に戻る」と小さく零しながら横を通り抜けようとしたら腕をつかまれて足止めされる。 思いっきり振り払おうと相手をにらみつけると、不敵に笑い返された 「なんなら俺と試してみます?本当の愛ってやつを」 「勘弁してくれ」 相変わらず何を考えてるのかさっぱりわからねぇ。 誰がお前となんか、言葉を飲み込んで俺はそこから逃げるように屯所へ戻っていった。 __________________ 沖土入りマース 個人的には銀魂は銀土しか受け付けないんだけど 前提が銀土ならなんでもいけます 2012*09*15 |