目を覚ましたら知らない壁があって自分はふかふかする何かに横たわっていた
視線をめぐらせ辺りを見渡す。
大きな窓に光が降りそそぐ。
茶色の木の扉の向こうから足音が響き、誰かが戸を叩く。

「ルーク様、起きてますか?」

声の主は昨日会話をした少年。
ガイ・セシルと名乗っていた少年だ。
俺は起き上がろうと体を動かすが、上手く動かずふかふかする何かから落ちてしまった。

「っ…ぁ…」

大きな音と共に体中に痛みが走る。
左のほうを強く打ったらしい、左腕がズキズキと痛む。

「ルーク!?どうした」

音に気づき、ガイが扉を開けて部屋に入ってきた。
視線を上げると確かに昨日話した少年だった。

「大丈夫か?ルーク」
「う…ぁ…」

両脇を掴み体を抱き上げられる。
そのまま少年の前に座らせられた。

「どこか痛いところはないか?」

少年の声にゆっくりと反応し、頷いた。
少年は俺の頭に手を置き、優しくなでてくれる。
何でなでられているのかわからず首をかしげると少年は笑って

「怪我がなくて何よりです。ルーク様」
「……」

とりあえず撫でられる感触が悪くなかったのでしばらくは大人しく撫でられていた。







「――――ルーク!」
「……ん…」
「いい加減起きろ!」
「あでっ!?」

痛みと共に目を覚まし、殴られた頭を摩りながら俺は体を起こす。
いつもとわからず大きな窓から光が差し込む。

「いつまで寝てるつもりだ?ルーク」
「うっせなぁ…いてて…主人を殴る使用人がどこにいんだよ」
「それは大変失礼いたしました。けどなぁ、もう謡将殿がお見えなんですけど」
「え、嘘マジかよ!?」

ベットから降りて着ていた寝巻きを脱ぎ、そそくさと普段着に着替える。
カウンターに置いてあった剣をガイから受け取り、恐らくガイが持ってきたであろう朝食のサンドイッチを口に放り込む。

「喉に詰まらせるなよ」
「ん。」

ガイからコップを受け取り水を飲み干す。
時折、胸元を軽く叩いて急いで飲み込む。

「じゃ、俺先に行くな」
「あぁ」

部屋を出る直前に頭の上にポンっと手を載せられ優しく撫でられた。

「な、なんだよ」
「いや?今日も元気なことで」

頭から離れた手をやや名残惜しそうに見つめてガイと視線があう。


「急がなくていいのか?ルーク様」
「あ、そうだった!じゃぁな」

扉を開けて中庭の中央へと走る。
後でガイの声が聞こえたがその声は扉の閉まる音によってかき消されてしまった。







「昔からかわんねぇーなぁ…本当に」

部屋に残されたガイは一人、幼い頃のルークの姿を思い浮かべていた。
自分に頭を撫でられて嬉しそうに微笑む表情。
撫でられて離れていく手を寂しそうに見つめる表情。
思い出したら口元が緩んでしまう。
それを隠すために手で口を覆うがそれでも緩みは止まらず。

「(正直、こんなこと思うのはマズイだろうけど)」

今だけ

そう、今だけなのだ






今だけ










fin.

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ガイ様が変質者に見える(この小説は)
愛焦がれる人の部屋で(しかも本人が居ない時)
その人のこと考えながら微笑むのはもう変質者の仲間入りですよね(己のせいじゃぁ)
私てきガイ様はこんな感じかなぁ?(えぇ)
むしろ、ガイはヘタレがいいです。
ジェイドにルーク取られてへこむのとか可愛いじゃないですかぁ(ェ)
2006*01*06



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