[決して独りにはしない]


「こぉら、どこに行くつもりだ、ルーク」
「ぎくっ」

夜、みんなで宿舎に泊まり部屋も珍しく一人部屋だったから俺は気兼ねなく一人でいつものアレをしにいこうかとこっそり部屋を出た。廊下を通り、みんなが寝ている部屋を静かに通過してロビーにたどり着いて入り口を出た瞬間、ガイに呼び止められた

「……ちょっと、散歩に」
「こんな夜更けにか?」
「えっと…」
「目をそらしたな?誤魔化すときにやる仕草だ。さぁ、正直に言うんだ」
「・・・」

俺は言葉につまり、萎縮された体から力を抜くため大きくため息をこぼす。
静かに視線を上げガイの方を見るが、どうやら珍しく怒っているらしい。目がマジだった

「…散歩ってのは嘘じゃない。ちょっと夜風に当たりたかったんだ」
「・・・・」
「……ぅ」

ガイの強い視線ににらまれ、また身体を萎縮してしまう。
嘘はついていないのに。ただ、本当のことを言ってないだけなのに

「ルーク」
「はい…」

ガイの手が伸びてきてとっさに身構えたが、ガイの手は優しく俺の頭を軽く叩いただけだった。
俺は緊張がほぐれ、恐る恐るガイを見る

「俺も一緒にいってやろうか?」

頭に乗せられた手は次第に優しく髪を撫でててゆき、指で優しく触れ始める。
その感覚がこそばゆくて俺は視線を下へずらし、小さく首を横に振る

「遠慮するなよ、ほら」
「ちょっ…!」

ガイは俺の手を取り歩き始めた。
強引に引っ張るものだから俺はガイに引っ張られるまま付いていく。

「ガイ…ッ」
「ん?」
「離せよ…」
「いやだね」
「ッ…」

ガイのことだから俺が何をしに外に行くのかわかっていたはずだ。
だから宿屋から少し離れた場所にある公園につれてきてくれて、俺のことをめいいっぱい抱きしめてくれた。

「一人でなんて泣かせやしないからな」

ガイは俺が泣き止むまでずっと抱きしめてくれていた。
それがすごく苦しくて悲しくて

とてつもなくうれしかった


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2008*10*14

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