心の奥で嘆くもの





「ガイ!ガイ!」

小さな朱色の少年が涙を流して泣き叫ぶ。
自分を認めてくれた彼を、自分を愛してくれる彼の名を。
真っ暗な空間、辺りを見渡しても何もいない、何もない。
自分が地面に立っているのも怪しいぐらいだ。けれど、一つだけ確かなことがあった。
それは彼が来てくれる事。彼はいつだって名前を呼べば飛んで駆けつけてくれたんだ。
自分がどこにいても、何をしていも。
少年は何度も名前を呼ぶ。声は反響せずただ暗闇に吸い込まれていくだけだった。

もうこれでもか、というぐらいに泣き叫び、立っているのも辛くなり声が枯れていく。
咳を交えながらも必死に未だ姿を見せない彼の名を呼び続ける。
喉が焼けるように痛い。もう声は出ない、名前を呼ぶことも無理だ。

「っ…」

肩で荒く呼吸をし、胸元の服を掴みそれでも名を呼ぼうと声を出す。
元から響くことのなかったこの空間ではその小さな声は誰にも聞こえなかった。
ポタポタと頬を伝い下へと落ちる涙。声は出なくても涙は出てくる。
拭っても、拭っても、拭っても。
涙はまだ枯れない。

「ぁ・・・!」

声を出そうとすれば喉が締め付けられ痰とともに咳が出てくる。
咳が出ればまた喉が焼けるような痛みに襲われる。悪循環の連続。
もう駄目だ、と諦め瞼を閉じる。体中から力が抜け、その場ゆっくりと倒れこむ。
地面があるのか頬には冷たい感触がある。土の地面ではなく恐らく石か何か冷たいもの。

「……」

最後の力を振り絞り重たい瞼を開け、暗闇の先を漠然と見つめる。
何もなく、変化もない。誰も自分の声を聞いてはくれない。
そう思うと無性に悲しくなる、苦しくなる。今度は胸までも悲しみで押しつぶされそうだ。

「………ィ…」

最後に一度だけ枯れ切った声で彼の名前を呼ぶ。
そして意識が途絶える―――――




「――――-いい加減目を覚ませ!馬鹿ルーク…!!」



声が聞こえた
彼の声だ
暖かい温もりを感じる
彼がいる
彼が近くにいる―――!




瞼をゆっくりと持ち上げるとぼやけた視界の先に金色に輝く何かが見える。
何度か瞬きをして視界からボヤケがなくなると、その金色のものは彼の髪だとやっとわかった。
背中に彼の腕があり、その腕が俺の肩を支えしっかりと支えてくれている。

「…ガィ…?」
「…!気がついたか?」

視界だけではなく、意識からもボヤケが飛び自分の置かれている状況を辺りを見渡し確認する。
眼前には彼。隣にティアやナタリア。それからアニスにジェイドの姿もある。

「・・・なんで…?」
「なんでじゃないだろ…お前、覚えていないのか?」
「・・・・」

覚醒を始め頭を働かせ記憶の糸をたどる。
その日は天気もいいことだし、経験値を上げようとのことでグランコクマ周辺で魔物退治をしていた。
それから俺が魔物の牙にやられ、毒を受けナタリアに回復してもらうはずだった。
しかし、回復は間に合わず俺は魔物に襲われ意識が途切れた。

「…あぁ、俺…やられたんだっけ…」

体を起し、彼の腕から離れる。
手で顔を隠し自己嫌悪に陥る。あぁ、またやってしまった。また心配をかけてしまった。

「立てるか?」
「あぁ…なんとか」

自己嫌悪を一旦打ち切り重い腰をあげ立ち上がる。
砂埃を払い、剣を確かめ柄を握り締める。
まだいける、まだ戦える。
誰にも気づかれないように唾を飲み込み精神を集中させ研ぎ澄ませる。
体中の音素が少なくなってきてるのが最近やっと分かってきた。
俺の命は後どれぐらい持つだろう?なんてマイナス思考なことも考えてしまう始末。
駄目だ、重症だ。嘘がヘタな俺はそんなこと思ってはいけないのに。

「無理はするなよ、ルーク」
「貴方が無理をすればカバーする私たちにまで負担がかかるわ」
「そうだよ!貴重な特攻隊長なんだからね!」
「それでも、怪我をしたなら私が直して差し上げますわ」
「やれやれ…若いって素晴らしいですね」

一人ひとり文句を零し少しだけ微笑みを返す。

「わかってるって。無理はしない」

そう、もう無理は絶対に出来ない
次、意識を失えば戻ってこれるか正直、自信がない。



だから



最後の闘いは目の前なんだ
こんなところで倒れるわけには行かない




「大丈夫だって、心配かけてごめんな?」


師匠は絶対に俺たちが止めてみせるから









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まぁた途中で風呂入ったから最後のほう滅茶苦茶。
切れたら私は最後までかけないのかなぁー;
相変わらず酷いなぁー
前半と後半の文字の量の違いには
20060403
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