したいほどかった







「がぁーいぃーっ」

与えられた自室で待機していると中庭のほうから幼い声が響く。
舌足らずでまだ言葉を覚えたばかりの小さな少年の声。
同室のペールと目が合うとペールは優しく微笑んで頷いてくれた。
俺はわざと遠回りするするように玄関広場へ向かう。

「……」

玄関に飾られた宝刀ガルディオス
もとは父上の物で今は公爵の物
手を延ばしても届かない。だがこれがあるからまだ生きていけると自分に言い聞かせる

「がぁーいぃーっ!」

中庭から聞こえる声が段々ぐずりだしてきたのが分かる。
仕舞いには泣き声が聞こえ始めた。
しょうがないとため息を零し中庭に向かう途中でメイドに見つかり駆け足で中庭に向かった。
中庭にはが差し込みその中央で赤毛の少年が地べたに座り込みわんわんと見っとも無く泣き喚いている。

「何泣いてるんだ?ルーク」

小さくため息を零し相手に近寄る
俺の声を聞くとピタリと泣き止みコチラを見る。
翡翠色の瞳がまじまじとコチラを見据えまた名前を呼んで泣き叫ぶ

「男の子が泣くんじゃない、何があったのか言えるか?」
「うぅ…」

しゃがみ込み視線を合わせ優しく頭を撫でてやるとルークは涙をふき取り必死に何かを伝えようと口を開く
しゃっくりと混じり何を言っているのか聞き取りづらくなっているがルークが何をいいたいかはこの二週間でようやく分かるようになった。

「くらぃ…」
「怖い夢でも見たのか?」
「どうして・・・?」
「俺には俺の部屋があるからな。自分の部屋に戻っただけだ」
「あぅ・・・?」
「わかったわかった。今夜は一緒に寝てやるからな?」

ルークは満足そうに笑みを零し両手を伸ばし抱きついてきた。
肩口でずっと俺の名前を呼びえへへと笑い声を漏らす。
鳴いたカラスがもう笑ってる。

「がい、すきー」
「俺も好きですよ、ルーク様」
「るーくさまぁー」
「はいはい」

抱きついたまま離れる様子がないのでそのまま抱きかかえ部屋に運ぶ
以前と比べて少しだけ重くなったかな?などと他愛のないことを思いルークの部屋の扉を開けた

「がいぃー」
「なんですか?」

ベットにゆっくり座らせるとルークは俺の服を掴んで離さない。
右手で軽くベットを叩き座るように支持され内心でため息をつき座り込む。
スプリングが軋みベットが沈む。それでもルークは俺の服から手を離さない

「いっぱい、いっぱいがいすきぃ」

ベットが揺れるのが面白いのか反動をつけて俺に飛びついてきた。
首に回された腕のせいで多少苦しくなったが所詮は子供の腕力、振りほどこうと思えば簡単に振りほどけたはず。
しかし出来なかった。
俺は飛びつかれそのままベットへと倒れこむ。
また派手にスプリングが軋み何度が浮き沈みした。

「がぁーいぃー?」
「ん?」
「すきぃ」
「俺もだよ」
「いっぱい?」
「いっぱい」
「……えへへ」

無垢な瞳で見つめられつい、復讐という目的を忘れて微笑んでしまった



そんな自分も、悪くないと思えてしまった









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なんかアビス書こうとするとどうもここの場面にいく。
もしくは裏にいっちゃうのでト書きがかけないので挫折(クタバレ)
ガイがまず初めに教えた言葉は「ガイ」と「ルーク」だといいなと思います。
それから絵本を読ませてルークが気に入った言葉を次々覚えていく見たいな?の希望です
好きなものから覚えるのが一番早いのではないかと思った。
「いっぱい」は「ずっと」と同じ意味でもいんじゃない?とか思いつつ
多分、「お菓子がいっぱいありました」とかで「いっぱい」っていい言葉なんだって思って覚えたのではないかと思う。
「すき」は母上から覚えた言葉だといいな。母親ってのは自分の腹痛めて産んだ子だから預言があったとしても
やっぱり「すき」だと伝えてるのがいいなーって
それからこのお話のルークの流行はガイの口真似?です。
繰り返し言うのがどうやら流行ってるらしいです。
2006*05*29
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