ぐるぐるまわる風車

そっと風が吹けば動き出す

一人じゃ動けない風車



今の俺もそうなんだろうか…――――







か ざ ぐ る ま を ま わ し て








カサカサ

クルクル

そっと息を吹きかけ風車をまわす。
手作りらしく不規則に止まり不規則に回りだす。
ルークは不機嫌そうに宿舎のベットに横になりながらずっとまわしている。

「………」

今日街に買出しに行った時、たまたま路上で店を広げている骨董品屋があって
たまたまその中に古びた風車が紛れていて仲間には内緒で買ってみた。
埃をかぶり形が崩れかけている赤い風車。
それがどうしても気になって仕方がなかった。

「……似ているのかも…」

寝返りを打ち仰向けになり天井を仰ぐ。
風車に視線を移せばハネの部分が今にも取れそうなのが分かる。
不恰好で汚れた風車。
何度見ても今の自分と重なる、と欝な気分になり腕で目を隠す。

「……(捨てられるのかも…俺もいつかは)」

散々酷いことしてきた。
多くの人を死なせた。
その代償は必ず帰ってくる。
それがわかっているからこそあの風車が見捨てられなかった。
頭の中でそればっかりが浮かぶ。
重症だ

「なんだ、風車か?」
「!?」

急に上から声がし腕をどかし見るとそこにはガイがいた。
いつもの微笑で風車を懐かしんでいる様子だ。

「どうしたんだ?風車なんて」
「…買った」
「買った?自分で作れるだろう?」

静かに首を横に降る
顔が上げられない
作るなんていわないで

「なら教えてやるよ」

鞄からメモ帳を取り出し二枚きり一枚をルークに手渡す。
ルークは一応受け取りその白い紙を見つめる。

「まずは正方形にするところからだな」

ベットに腰掛自分の膝の上で綺麗に三角をつくり手際よく正方形を作る。
「ほら」と催促されルークも姿勢を起し渋々作り始める。

「懐かしいな…昔はよく作ったんだけど…っと」

ものの見事に完成した新しい風車。
ガイは支えの部分を探しに今出来た風車をベットに置き再び鞄をあさりに行く。
完成された白い風車をルークは」そっと手に取る。

「…(簡単に作れるんだ)」

レプリカも風車も



自分の代わりも



「お、これなら…」

いいのが見つかったのか短めの棒とソレより少し長めの棒を手に持ちベットに戻る。
鼻歌交じりで細工を施しルークから風車を受け取り取り付ける。

「完成。な?簡単だろう?」
「…」

クルクルと風で綺麗に回る風車
カサカサと音を立てて回る風車
ルークは見よう見真似でガイから与えられた紙で風車を作り始める。
上手く切り込みが入らない
上手く輪にならない
四苦八苦しながらもとりあえずは風車の形は出来た。

「あとは…これをこう取り付けて…」

出来た風車をガイに渡すとテキパキと完成させルークに返す。
ルークはその風車をじっと見つめそっと息を吹きかける。
けれど風車は回らない。

「…」
「まぁ最初はそんなもんだろう…」

ガイがフォローにはいるが全くルークニは届いていない。
動かない、出来損ないの風車を見つめふと、あの言葉が蘇った。


『出来損ないのレプリカルーク』


ルークを今もなお苦しめ続ける存在の声。
どんなに被験体に「屑が」と罵られようとも
ヴァンに言われるこのたった一言のほうがより重く感じられる。

「…出来損ない、だな」
「そうか?」
「だって回らないじゃな…使えないよ」
「回りはしなくても、俺はそれでいいと思うけどな」
「どうして。使えないのに…出来損ないなのに…ッ」
「…」

風車を持つ手に力が入る。
俯きずっと出来損ないの風車を睨む
自分も出来損ないでいつかは捨てられる
ヴァンにもティアにもナタリアにもアニスにもジェイドにも


ガイにも



「『使えない』からって出来損ないは酷いんじゃないか?」

ガイは優しく微笑みそっとルークの手から出来損ないの風車を取る。
風車を膝の上において綺麗に輪を作り膨らみを持たせる。
四箇所綺麗に整え息を吹きかけると、とてもゆっくりだが風車が少しづつ動き出す。


「『出来損ない』にだってチャンスはあるだろう?」
「チャンス・・・・?」
「誰かが手を貸してやればいい、誰かが直してやればいい…そうすればコレだって動く」
「…それって、結局一人じゃ出来ないってことじゃん」
「最初は誰だって一人で出来るとは思わないけどな、俺は」

また風車に息をかけカタカタまわす。
「な?」と視線を向けられれば少しだけそうなのかもしれないと思えてきた。
自分にだってまだチャンスはあるはずだ、まだ直ることが出来るかもしれない、と。


「・・・・・ガイも?」
「ん?」
「ガイも作るのヘタだった?」
「そりゃぁ最初はな。作っても回らないからいつもヴァンに直してもらってたさ」
「そっか…」


それを聞いてつい笑みがこぼれた。
ガイも自分と同じなんだと思えたから

「なぁ、じゃぁ師匠は?」
「最初は出来なかったって言ってたかな」
「やっぱり誰かに直してもらってたのかな?」
「そうだろうな」
「……そっか…」

笑みが抑えきれなくなりつい小さく声に出して笑ってしまった。
最初は不思議そうにルークを見つめてたガイだが
満足そうに微笑むと優しくルークの頭を撫でてやった。


一人で動けなくても必ず誰かが力を貸してくれる
そう思った





( 誰が、とは絶対に言わないけれど )









fin







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東京駅に向かう途中のレンガの壁を見て思いついた作品です(謎
やっぱりト書きというか描写がかけなくなってる・・・・
少しレベルを下げてでもいいから書きまくってみようと思った。
無理に上にあわせる必要はないと今自覚した、てか思い出せた。
人間って大変だなぁー(謎々!
2006/06/18
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