このお話はめちゃくちゃパラレルで、法に反するものであると自覚しております。
なので、期間限定公開とさせていただきます……

(わかったえるならやるな、とか言わないでください。やらねばならないと心が叫んでおるのです
 こんな物書きですみません)
































週末の大通り。
多くの人が行きかう街の光を浴びない場所。
そこから姿を現したのは真紅の長い髪を靡かせた青年。
服の隙間から見える青痣や口元から微かに流れる赤い血。
後ろのほうには傷だらけの人間が山積みになっていた。

「…(口の中も切れたか)」

口の中に血がたまる。
ソレを唾と一緒に外に吐き出す。
昨日は昨日で知らない男どもに絡まれ怪我を負い、
今日も今日でまた知らない男どもに絡まれ怪我を負った。
一人が「仲間の敵」なんて叫んでいたが、俺には関係ない。
孤独には慣れていた。寧ろ望んでいた。
「仲間の為」なんて馬鹿らしくてやってられるか

「………(腹減った)」

空を見上げ灰色の空を見る。
暗くて分厚い雲はどこまでも続いていく。
金はさっきの奴らから盗んだ。これで何か買って食べよう。

「綺麗な髪してるな」
「!」

ふと、背後に気配を感じる。
振り返り間合いを取って拳を構える。

「あ、驚かせてすまなかった。つい、綺麗な髪だったから…」
「……」

金色に翠玉の瞳。
人柄のよさそうな人相。
俺とは正反対の生活を送っているのだろうと感じた。

「……」
「そう警戒しなさんなって、俺はガイ。君は?」
「…」
「…コホン、えーと。職業は絵描き」
「絵描き?」
「おっ やっと反応してくれたな」
「…」

ガイと名乗った男は脇に抱えていたスケッチブックを取り出し適当なページを開いて俺に見せる。
白い紙の中には綺麗な女性の姿が描かれていた。
鉛筆で書かれた白と黒の女性の絵。ド素人の俺にでさえこの絵が素晴らしいと思えてしまう。
スケッチブックを手に取りページをめくっていく。
やんちゃ坊主に妊婦。それから老夫婦に小さなカップル。どれも素晴らしかった。どれでも見惚れてしまった。

「……気に入ってくれたかい?」
「…多少な」

ガイの声に反応し、スケッチブックを閉じ本人へと返す。
そしてそのまま振り返りその場を後にしようと足を進めた。

「待ってくれ、まだ君の名前―――」
「…アッシュだ」

足を止めガイのほうを見て少し照れくさそうに答えた。










昼間。陽が昇りきり後は落ちて行くだけの午後。
公園の青いベンチに彼がいた。隣にはスケッチブックをが置いてある。

「やぁ、また会ったな」
「…また待ち伏せか」

ガイと出会ったのが一週間前。
それから毎日俺が行くとこ行くとこにガイがいる。
ある日は女性の絵を描いていたり、
またある日は祖母と孫の二人を書いていたり。
またまたある日は、「俺に会いに来ただけ」とか…

「待ち伏せじゃなくてたまたまだって」
「偶然がこんなに続くはずがねぇ」
「じゃぁ今日は偶然だな」
「…もういい」

スケッチブックの隣に腰掛ため息を零す。
今日はまだ絡まれていないので怪我は負ってないものの、
昨日・一昨日の怪我がまだ治癒されていない。額の角に一枚、唇の端にも一枚絆創膏が張られている。

「ほら、ミルクでよかったんだろう?」
「…」

ガイが差し出してきたミルクティーの缶を渋々受け取り軽く振ってからプルタブに指を引っ掛ける。
ついこの間、衣替えが終わったと、テレビで言っていた割にはまだ寒さは抜けない。
だからガイが用意してくれるこの飲み物だけはいつも感謝している。

「上手いか?」
「まぁな」
「腹、減ってないか?」
「……」

ガイは肩からかけていた鞄からバンダナで包まれた箱を取り出し、
丁寧にバンダナを解いていく。蓋を開けると、中にはサンドイッチが入っていた。

「食うか?」
「…」
「腹減ってんだろう?」
「…いらん」
「上手いぞ?」
「…」

差し出されたサンドイッチに視線を移すと都合悪く腹の音が鳴り響く。
顔真っ赤にしてとっさに腹を押さえるが誤魔化しきれていない。
男はきょとんとした表情で俺の顔を見る。
それからまたいつもみたいに微笑む。

「遠慮すんな。な?」
「……」

金もないし正直、腹も減っている。
俺は恐る恐る手を延ばしサンドイッチを奪う。
口に運ぶとハムとレタスの感触。それに隠し味にマーガリンがパンに塗られていた。
奪ったサンドイッチも二口で食べ終わり、ガイに差し出された箱を受け取りパクパクと口に運んでいく。

「……」

箱に敷き詰められていたサンドイッチが残り二つとなり、その一つに手を延ばした。
すると横で鉛筆を走らせる音がする。
見るとガイがスケッチブックを開き懸命に何かを書いていた。
俺は動きが止まり、ガイが顔を見上げコチラと目が会うと何事もなかったかのように、

「美味かったか?」
「っ―――てめぇ…!」

スケッチブックを奪おうと手を延ばすが、サンドイッチの時のように上手くいかず逃げられる。
身を乗り出し圧し掛かるが、それでもやっぱり逃げられてしまう。
俺はサンドイッチのことなんかすっかり忘れてガイからスケッチブックを奪うことに集中していた。






「……(今日もいない)」

あのサンドイッチ事件から一週間がたった。
公園にも、初めてあった裏路地にも、駅の待ち合わせ所にもガイの姿が見えない。
いればいるだけウザイんんだが、いなければいないで何か物足りなくなってしまっていた。
もう春だっていうのに空は晴れず曇りばかり。
風が冷たくまだ冬が抜けきっていない。

(ガイ)

目を閉じガイのことを思い出す。
突然俺の髪に触れてきて「綺麗」だなんてほざいたフザケタ野郎。
「偶然」を装い毎日俺に会いにきていたストーカー野郎。
不覚にも、アイツの作った料理が美味いだなんて思えてしまった自分。

(重症…だな)

会いたくて会いたくて、心が叫ぶ。
俺はガイを探すことにした。



駅前の靴磨き屋に聞くと近くのおんぼろアパートに住んでるらしい。
(近くにガイが書いた似顔絵があった。嬉しそうに微笑んでいた)

駅の待ち合わせ所の近くにあるケーキ屋に聞くとどうやら公園の近くに住んでるらしい。
(店員の似顔絵が沢山飾ってあった。どれも幸せそうに微笑んでいた)

公園に住み着いてる浮浪者にも念のため聞いてみるとすぐ目の前の青い屋根のアパートに住んでるらしい。
(宝物と大事に仕舞われていた似顔絵。身形は汚かったけど笑顔はとても綺麗だった)


青い屋根のおんぼろアパート。
二階建ての今にも崩れそうな木造造り。
話によると二階の角部屋らしい。俺は階段をゆっくりと踏みしめ二階へと登る。
錆びてた鉄の階段が悲鳴をあげる。廊下に出ると廊下も悲鳴をあげる。
ギィ、と一歩。
ギィ、とまた一歩。
一番奥まで辿り着き標識を確かめる。
標識には何もかかれていなかった。部屋番号は208号室
恐る恐るインターフォンを押す。
『ジリリリ…』音が鳴っても中からは応答がない。
もう一度押す。今度は力強く、少し長めに。

「はい」

すると、ようやく中から声がした。
ガイだ。ガイの声だ。

「……俺だ」
「生憎ですが俺っていう知り合いはいませんが」
「俺だ!」
「どちら様ですか?オレオレ詐欺の方はご遠慮ください」
「…っ」

ガチャリと扉が開く。
扉の向こうにはガイが笑いを隠し切れず小さく笑いながら俺を出迎えてくれた。

「素直に名乗ればいいだろう?ったく…おかしな奴だなぁアッシュは」
「…黙れッ」




「あ、それ踏むなよ」
「…これは」

狭い部屋に入ると床や壁、いたるところに書きなぐった絵が飾られてあった。
よくみるとどれも似ていて、どうやら一人の人物を描いたみたいだ。
一枚拾ってみる。長い髪に質素な服。鋭い目つきに焔が灯ったような強い意志が感じられた。

「それお前」
「!?」
「ついでにアレもコレもみーんなお前」
「な…っな、はぁ!?」

やかんに水を汲みガスコンロの上に置いて火をつける。
ガイは呑気に鼻歌なんて歌いながらカップを用意する。
手に力が入り持っていた絵を握りつぶそうになる。

「急に描きたくなってな。時間も忘れて描いてたんだ」
「馬鹿か!?なんで…!」
「綺麗だろ?」

ガイは俺の指を解き紙を広げ自分の描いた絵を見つめる。
皺の入った画用紙に描かれた俺。
正直恥ずかしくてこんなもの全て燃やしてやりたかった。

「俺、アッシュのこと好きみたいなんだ」
「っ!?」
「この強い瞳とか…あぁ、それから長い髪……」

画用紙に指を滑らせ線をなぞっていく。
ガイは自分の書いた絵に見惚れしているのかなんなのかは分からないが
指で線をなぞりながらもう一度その絵を描いていく。

「ここのラインも…綺麗だよなぁ…」
「いい加減にしろ!この屑ッ!」
「そう恥ずかしがるなって。全部本当のことだから」
「なおさら悪い!」

ついに手に持っていた画用紙を握りつぶしぐしゃぐしゃに丸めてガイに投げつけた。
ガイは眉をさげつつも笑いを絶やさずその丸まった画用紙を受け取り綺麗に皺を伸ばしていく。

「そう怒るなって」
「ふざけるな!帰る…!」

床に敷き詰められていた絵を入ってきたときとは違って気にせず踏みつけてその部屋を後にした。
古びた階段を駆け下り振り返りもせずにそのおんぼろアパートを立ち去る。





「……」

それから3日が経った。
ガイが外に出る様子はない。まだあの狭くて汚い部屋で絵を描き続けているのだろうか?
俺は気になりまたあのおんぼろアパートへと足を向ける。


おんぼろアパートは3日経ってもおんぼろで軋む階段をゆっくりと踏みしめまた奥の扉へと歩む。
だが、ガイの部屋の前には長身の亜麻色の眼鏡のかけた男がいた。
どうやら部屋から出てきたらしい。こちらへゆっくりと向かってくる。
途中で視線がぶつかり軽く会釈をし不審に思いながらも俺はその男を見送った。

「・・・・(誰だ…今の男)」

気にはなるが考えても答えが出るはずがない。
ため息を零し後でガイから聞きだすことにし、俺は呼び鈴を鳴らす。

『ジリリリリリリ……』

また出てこない。
また絵を描き続けてるのかと思うと(しかも俺の絵)段々腹が立ってきて返事を待たずに扉を開け部屋に入る。

「ガイ…!いつまで―――!?」

狭い部屋だった。
扉を開ければ部屋の隅まで見渡せるような狭い部屋。
だから、部屋の中心で倒れているガイがすぐに目に付いた。
慌てて靴を脱ぎガイに駆け寄り名前を呼ぶ。

「一体何が…!」
「やぁ・・・・アッシュ、今日も綺麗だね」

辛うじて息があった。
腹を赤く染め床に敷き詰められていた画用紙はガイの血で赤く染まる。
画用紙に書かれた絵が血で赤く染まり消えてゆく。

「情けないよな…俺…馬鹿みたいだな」
「・・・?」
「夢追いかけて家を飛び出して…結局は叶わなかった…っ!」

ガイの瞳からは溢れんばかりの大粒の涙が次々と零れてゆく。
俺はソレをどうすればいいのか分からずただその流れ行く涙を見つめていた。

「ガイ…!死ぬな…ッ今救急車を―――」
「そこの本棚に…青いスケッチブックがあるだろう?」

最後の力を振り絞り声を出し続けるガイの指した先に視線をやる。
小さな机の上にある本棚。その中に他と比べて綺麗な青いスケッチブックがあった。
俺はそのスケッチブックを手に取り中を開く

「それを…届けて欲しいんだ……愛する人に――――」






「はぁ…っはぁ…ッ」

右手にしっかりとスケッチブックを握り締め日の暮れた街を走る。
下車した駅からずっと走り続け息が切れてもまだ走り続けなければない。


『二つ先の駅に住んでるんだ…俺の愛する人が』


荒れた呼吸を整え前を見据えまた走り出す。
約束をした。口約束で、放り投げても構わないようなチンケナ約束を。


『待ってるんだ…俺が…帰ってくるのを……ずっと…―――』


これでもかというぐらい走った。
この街には以前来たことがある。
ガイに教えてもらった目印を頼りに俺は走り続ける。
こんなに走ったのは生まれて初めてだ。
追いかけられれば殴り追い返すし
走り続ければすぐに捕まえまた殴ってきた。

「―――だから届けてくれないか?俺の…代わりに」
「ふざけるな!そんな大事なもの自分で届けやがれ!」
「俺は…もう無理だから…」
「諦めるのか!待ってるんだろう!?」
「しばらくしたら今度は止めを刺しに戻ってくる」
「!」
「だから俺はここにいなきゃいけない」
「……お前…」
「頼むよ、アッシュ……」
「…っ――――」



道の端に置いてあった商業用のゴミ箱に足を取られ大きな音とともに派手に転ぶ。
転んでもスケッチブックは絶対に手から離さない。
すぐに起き上がりスケッチブックに付いた汚れを叩き自分の怪我なんて気にせずまた走り出す。
息が乱れもうまともに酸素も吸えない。それでも矢張り走り続けた。
頭の中で満身創痍ってこういうことを言うのだろうか?と遠くで誰かが呟いているのが聞こえる。

もう家まであと少しだ





「やぁ、鮮血のアッシュ…随分と息を切らせて…どこに行くつもりだい?」
「……」

近道と思い公園をつっきりそのまま小道に入ったのがまずかった。
前後からは人間に挟まれ左右はコンクリートの壁に挟まれ身動きが取れなくなた。

「…誰だ…てめぇ…」
「忘れちまったのか?俺だよ。先月お前に病院送りにされた…な」

深緑色の髪をなびかせコチラを睨んでくる。
その後には凶漢な大きな男に自分の背後には金髪のエアガンを装備した女と縫い包みを抱えたピンク色の髪の少女。
左右の壁は身長より高くざっと見積もって2メートル半。上手くすれば飛び越えられる高さだ。

「何?もう逃げる算段でも考えてるわけ?」
「そう易々と逃がすはずがないだろう?」

四人は構えタイミングを見計らって俺に飛び掛ってきた。
手に持ったスケッチブックを盾にする事は絶対に出来ない。数発打たれたエアガンの玉を背中で受け痛みと衝撃で前かがみになりつつも前から来る二人を睨み小さい深緑色のしたほうの頭を踏みつけ土台にしそのまま左手で壁を掴み壁の向こうへと逃げた。
庭を通り過ぎる際に背後の壁から小さく声が零れたが気にせずまた走り出した。


どこぞで情報を聞きつけたのかその日はやたらと絡んでくる人間が多かった。
丸眼鏡をかけた機械オタクに
凶暴な熊のような犬を連れた二つ結びの少女。
それからこの街の王を名乗る金髪の馬鹿。
とにかく多かった。
おかげで入らぬ体力を使ったし怪我も負った。
ようやく目的の家に辿り着いた時は体が傷だらけで息が荒れているせいで喋るも辛かった。
喧嘩の際に腹に一撃食らわせられそれが効いているのか唾液と一緒に胃液もろとも血まで出てくる始末。

「(確実に…ヤバイ……だが)」

目の前に見えるは目的の家。
築10年はいっていないだろう一軒家。
俺は恐る恐るインターフォンを鳴らす。
鳴らし音が聞こえそれに安堵したのか体中の力が抜け壁に背もたれながらずるずると地面にしゃがみ込んでしまった。
声と一緒にコチラに近づく足音も聞こえる。瞼が重い、もう開けていられない。


「―――っと…やっぱいたずらか?」

扉を開け不満そうにインターフォンを確認しに行く。
ここ最近、子供達の間で「ピンポンダッシュ」というものが流行っているらしい。
おかげでこっちはその標的にされるわけで…
ため息交じりで門を開け見ると矢張り誰もいない。

「ったく…ふざけんじゃ―――」

視線を下げればそこには青いスケッチブックが置いてあった。
不思議に思い手に取り表紙をめくる。



『  愛しい君へ  俺の全てを捧げる   』


次のページには自分によく似た人物が嬉しそうに微笑んでいて
更に次のページには自分によく似た人物が切なそうにどこか遠くを見つめていて
更にその次のページには自分によく似た人物が幸せそうに寝ていて
慌てて最後のページをめくるとそこには二人の姿があって。

「――――…ガイ……!」

そこには以前約束を交わした愛しい人が自分と一緒に微笑んでいて
その絵を見ていたら訳も分からず涙があふれ出てきて、拭っても拭っても収まらなくて、その絵の下に一言だけ書かれていて――――


『   あいしてる    』






「っ……約束は…守ったぞ…」

スケッチブックだけを置き捨て人が来る前にさっさと逃げ出した俺。
近くに丁度よく空き地を見つけたのでそこに避難した。
近くで工事が行われるらしく空き地にはその資材が大量に置かれていた。
ここならきっと誰も気づかないでいてくれるだろう。
座れる場所を見つけて脱力し座り込む。
空を見上げればいくつか星が輝くのが見える。
耳を澄ませば都会の騒音が小さく聞こえる。
体はすっかり冷え切ってもう立つ事もできないだろう。

「………(似ていた…)」

あのスケッチブックに描かれていた絵は俺によく似ていた。
似ていただけで俺ではなかった。

「(愛する人・・・なんだろうな…アイツの)」

最後のページには「あいしてる」と書かれていた。
俺にではなく俺によく似た愛する人へ

「(好きだったのかもしれない…)」

もう手遅れだが、今更気づいてしまった。
いや、今気づくべきだったんだ。もう最後だから
瞼を閉じて思い出す。そして一言小さく呟いた




「あいしてる」









_____________________________
はい!終りです!パクリです!!
つーか原稿打たずに何打ってんのよぉ!って感じですわ。
パクリと自覚しているので裏行きにしました。
おかげで裏はサーチにヒットしません。
こ、これでなんとかにゃるかなぁ・・・誰か詳しい方教えて…!!
これは法に引っかかるのでしょうか・・・?;
2006*05*01
inserted by FC2 system