______________寂しがり屋の少年








「ティトレイ、『ティートレーの花』頂戴?」
「……」

ユリスを倒し、世界を救った僕ら。
ヴェイグとクレアさんはスールズへ
アニーはバルカへ
ヒルダはモクラド村へ
ティトレイはペトナジャンカへ

そして僕とユージーン旅へ

それぞれ違う道を歩むことになり、今夜はみんなと過ごす最後の夜。
アニーお手製のくじ引きで部屋割りを決め(男子だけ)、僕はティトレイと、ヴェイグはユージーンと。
それぞれの部屋に入り、最後の夜を過ごす。

「・・・・花?」
「うん 花」
「・・・・」
「頂戴?」
「・・・別に…イイケドさ。なんだよ急に」
「別に?急に欲しくなっちゃったの」
「・・・・」

ティトレイは首をかしげながら両手を合わせ、フォルスを集中させた。
そしてポン、という音とともにティトレイの手には『ティートレーの花』が握られていた。

「ほらよ」
「ありがと。ティトレイ」

不思議そうな表情でマオに花を手渡し、花を見て喜ぶマオを見てさらに首をかしげた。

「なぁ、何かあったのか?」
「ん?」
「何かあったのかって聞いてんだよ」
「だから何でもないてば。急に欲しくなっちゃっただけ」
「どうして急に花なんて欲しがるんだよ」
「わかんない。ただ、欲しかった、それだけだヨ」
「・・・」

ティトレイは納得がいかず、そのままマオを睨むがマオは嬉しそうに花を見て微笑むばかり。
次第に、馬鹿らしくなってきたティトレイはため息を零し、渋々諦めたご様子。

「勝手にしろ」

そう一言残してティトレイは部屋を出た。



「ティートレーイは…♪」

ティトレイが居なくなり、マオは静に花を見つめ歌を歌う。
マオが作った『ティトレイの歌』
メラメラ ボサボサ あわわわ アチョ
ティトレイとイコールで結びつけ垂れる単語をリズムに乗せて静にゆっくりと口ずさむ。

『何かあったのか?』

「…何か、じゃないでしょー…」

これで僕らの旅は終わりなんだ。
次は自分探しの旅に出る。
きっと新しい出会いもあるだろう。
きっと素晴らしい別れも出てくるだろう。
きっと楽しいことも
きっと嬉しいことも
きっと悲しいことも―――


でも




「このメンバーでの旅は今日でお終い…」

二度と出会えない仲間じゃないけれど、
今みたいにはいかなくなる。

寂しいのは僕だけ?
苦しいのは僕だけ?
皆は家族の待つ家に帰ることが出来るのに僕にはその家すらないのに

「・・・・・・寂しいじゃん・・・」

静まり返った部屋に小さく零れたマオの本音
本当は分かれたくない、まだずっと一緒にいたい
だけど、我がままはいえない。
だからせめて欲しかった。形が欲しかった。

だから花を貰った

「ティトレーの無神経…馬鹿ぁ…」
「だぁれが馬鹿だって?マオ」
「!?」

閉まっていた筈の扉が開いていて、そこにはやや不機嫌そうなティトレイが立っていた。

「あ、あれ?いつからそこに?」
「ついでに無神経で悪かったな」
「(怒ってらぁ……)」

ティトレイは部屋に入り、マオの隣に腰を下ろす。
マオはマオで気まずいのでティトレイの顔を伺うが、ティトレイの表情は硬かった。

「(怒ってる…よね?)」

小さくため息と一緒に「あちゃぁ」と小言を零す。
すると、ティトレイは両手を合わせ、またフォルスを集中させた。
ポン、ポポン
そして生み出された花はマオの頭上から次々に降ってきた。

「てぃ、ティトレイ?」
「俺だって寂しいに決まってんだろう」
「え…」

花を出すのを止め、マオの頭に手を乗せ視線を合わせるティトレイ。

「もうコイツらと一緒に旅が出来ないのは俺だって寂しいし、みんな同じことを思ってるに決まってんだろう」
「…ホント?」
「マジだ」
「……」
「だから一人で泣くなよな」
「っ―――」

「ティトレイの馬鹿」と怒鳴りつけ、マオは大粒の涙を零した。
突然怒鳴られるわ、急に泣き出されるわでティトレイはどうしたらいいのかわからず、あたふたしていた所、
マオの泣き声を聞き、ユージーンやヴェイグ。アニーたちが部屋に集まった。

「今度は何をしたんですか?」とティトレイと叱るアニー
「ティトレイ、どうにかしなさいよ」とタロットを片手にヒルダ
「どこか痛いの?」と泣き続けるマオに声をかけるクレア
「ティトレイ…」と目で訴えるヴェイグ
「俺は何もしてねぇよ!」と泣きそうなティトレイ
「大丈夫か?マオ」とマオをなだめるユージーン
それでも泣き止まないマオ。


花を欲しがったマオにたくさんの花をくれたティトレイ

本当は泣くつもりなんてなかったのに

もっと欲しいと言いたかったのに


嬉しくて涙が抑え切れなかっただけなんだ





fin.











_____________________
久しぶりに一気に書き上げました。
再び?お題を書こうと書き始めた一品です。(お題は「華」でした)
アタシの中のマオは一番寂しがりやで一番の臆病者です。
臆病だから失いたくない
寂しがりやだから失いたくない
そんな感じです。
長編じゃないけど、オルセルグシリーズって感じです。
2005*12*30


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