生きることをあきらめないでほしい

どうか
どうか

もう少しだけ





思いよ届け―僕らの願い―





「ねぇねぇ、最近さ大佐へんじゃない?」

久々の宿での食事中。
体を乗り出しアニスが話し始める。それに乗ってティアとガイも気にし始めてナタリアだけはそんなことないと食事を続ける

「いっくら研究しなきゃいけないからってさ、ちょっと篭りすぎだよ」

フォークで俺を指差し先端を見つめる。そのうちフォークを伝って自然にアニスの視線とぶつかり俺はつばを飲み込んだ

「いっくら大佐でも、食事をおろそかにしちゃうと死んじゃうんだからね!わかってる!」
「わ、わかってるよ!…たぶん」
「多分じゃなぁい!せっかくアニスちゃんが丹精こめて作った料理を食べないなんて…!末代まで呪ってやるから…」
「…」

皿に盛り付けられているチキンをおもいっきっりフォークで串刺しにしてなにやらよくないことお企んでいるらしい。でも、確かに最近のジェイドは宿に泊まるとなればずっと部屋にこもって何かの研究をしているらしい。
一度だけ部屋へ入ったことがあるけど、あまりにも真剣に本を読んでいていつもなら気づいてくれるはずなのに気づいてくれない。それがちょっとだけ寂しくなってそれ以来、部屋には入ってない。

研究の内容も大いに想像がつく。
レムの塔での一件で俺はいつ消えてもおかしくない状態になった。
体中の音素が少なくなり、大きな衝撃で簡単に崩れる。だからジェイドは最終戦、ヴァン先生を倒すまでは生かしてくれるように研究をしているんだ。アッシュがいればいいんじゃないか?と聞いたけどそれでも、レプリカルークも必要なんだと言ってくれた。
なぁ、ジェイド。俺はその言葉だけで十分なんだぜ?




* * * *



「さてと…」

すっかり寝静まった宿のキッチンをこっそりと宿主に借りて借りた。
軽食ぐらいならルークの屋敷にいたときによくアイツらに作ってやったからな。パンに切れ目を入れて軽くあぶったベーコンと赤・緑の野菜を適当に詰め込む。それから昼間、アニスが膨れながら「夜食作るならこれも渡しといて!」となかば半切れで渡された特性ホットレモン。疲れた体を癒すのには最高だとか。
作ったサンドウイッチとホットレモンをお盆の上に載せて静かにあの部屋へ向かう。
ノックを鳴らしても気づかないので静かに扉を開けて部屋に入る。
電気を落としてデスクの近くにある明かりだけでずっと読みふけている。読んでは違う参考書をとり、ページを探して指で言葉を探す。途中目が疲れたのかメガネの下から指をしのばせ眉間を押さえる

「ここらで一服入れたらどうだ?」

俺の声でようやく俺がいるってことがわかったらしく少し驚いた表情をしたあと、すぐに肩の力を抜いていつものあの調子に戻る

「そうですね。せっかくガイが愛情こめて私のために夜食を作ってくれたみたいですし」
「別にお前のためじゃないさ」

お前のためじゃない
お前だって俺のために調べてるわけじゃないだろ?
――――俺らはみんなアイツのために動いてるだけだろ?
言葉の裏にそんな言葉を隠してテーブルの上に盆を置く。
ホットレモンをもう一度マドラーで混ぜてレモンとハチミツが均等になるようにやさしく混ぜる。

「アニスからの差し入れ。次にアニスの食事にこなかったら呪うとさ」
「怖いですねぇ。気をつけます」
「ベーコンは食べれるよな…苦手なのって」
「問題ありませせん。食べれないものはありませんから」
「…苦手なのはあるくせに」
「ガイー?なにか言いましたか?」
「なんでもないよ」

サンドウイッチが乗った皿をジェイドに渡してホットレモンはデスクの隅に置く。
少しだけ視線をデスクにやるとぎっしりと書かれたノートと書き込みだらけの本。なんだか想像していたジェイドとはずいぶん違う印象を受ける。

「見つからないんです」

俺の視線に気づいたのか小さくこぼしたはじめた本音

「音素を維持し続けることはできます。しかし、避けれないことがある」
「…珍しいな。あんたが弱音を吐くなんて」
「レプリカはいつか本体と1つになる。そうなったとき、残る人格はオリジナルなんです」
「・・・・」
「レプリカの記憶も多少は移植されるでしょう。しかし、2人の人間の人格は完全に1つになって…つまりはオリジナルの記憶が残される」
「・・・」
「何度調べても、何度考え直しても答えはあの頃と変わらない。ここまでくると自分の才能を呪いたくなりますよ」
「・・・ジェイド?」

ジェイドの髪がかすかに揺れて一瞬だけ声が震えたように聞こえた。

「私は、大切だと思える人さえ守れない弱い人間だったんですね」

サンドウイッチの皿を持つ手が少しだけ強められたのを見逃さなかった。
あのジェイドがここまで弱気になるなんて今後絶対見れないだろうなんてのんきなこと考えたけど、そこまで悩んだんだろうなと思った

「誰だってそうだ。守りたいのに守れない。ならどうすればいいか知ってるか?」
「・・・」
「譲らなければいい。誰にも、その思いだけは譲らなければいいんだ」
「・・・・」
「だから俺も、譲らない」

ついクセでジェイドの頭に手を載せてしまう。指でそっと髪を救い指に絡める

「俺はルークの隣で必ずアイツの願いを叶えさせてやる」
「…」
「あんたはどうするんだ?」
「…ったく、あなたという人は」

ようやく顔が上がったジェイドと視線がぶつかったんで調子にのってウインクなんてしてみた。
そうするとジェイドがため息をついてずれかけたメガネを指で押して戻し、サンドウイッチを手に取りおもいっきりかぶりついた。
豪快にかぶりつく姿にちょっとだけ引いたが皿の上からサンドウイッチが消えていき、ごっくんとすべてを飲み込むと指で唇の先を拭き取り

「ご馳走様でした。大変おいしかったですよ」
「そりゃぁお粗末さまでした」

すっかり調子を取り戻したジェイドに安堵し、ほどほどになと一言残して部屋を出ようとする

「ガイ」

扉を開けたところで呼び止められて振り向くがジェイドはもうすでにデスクに向かっていて表情は見えない

「得意分野では負けませんよ」

1冊本を上へかざしながら右手では何か書き始めていてそんな器用なジェイドが可笑しくなって自然と顔が緩み捨て台詞を吐いて俺は部屋を出た。



どうか
どうか
あきらめないでほしい

ようやく歩き始めたんだろ
だからもう少しだけ


あきらめないでほしい













___________
ジェイルク前提ですよwww
ジェイドもガイもルークが大好きで
でも互いに一番してやりたいことが相手にしかできないというもどかしさが…
って思って書きはじめたのに!
ちょっ別物・・・!www←毎度のこと
最初がルーク支店なのは2部構成の予定だから!
2009*09*05

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