「お前…好きなやついるのか?」 「・・・何ですか、藪から棒に」 「…」 「……見てたんですね」 「ふ、不可抗力だッ!」 「よくそんな言葉を知っていましたね」 「うるせぇっ!」 放課後、部活前の更衣室で2人っきり。 クラスの掃除が長引いてしまい着替えが遅くなってしまい、2人でいそいそと着替えていた時だった。 彼がこんなことをいうのはおそらく、昼休みのアレを見たからだと思う 「……で、どうすんだよ」 「何をですか?」 「ラブレター!もらったんだろ?……付き合う、のか?」 「火神くんには関係ありませんよね」 「そーだけどッ!」 「……」 制服をハンガーにかけてロッカーを閉める。視線の端で彼を見るとまだワイシャツのボタンをはずしたところで止まっていた。 彼は一体、何を気にかけているんだろう?自分に恋人というものができてしまうということだろうか?それによって部活、バスケを疎かにするんじゃないかと疑っているのだろうか?沈黙し続ける彼を背に僕はリストバンドを腕につける。 付き合うはずがない。だって僕はずっとあの日から―――なりたいじゃねぇーよ、なるぞ!―――君に憧れ、惹かれ、恋焦がれているんだから。 第一、あのラブレターは僕宛てではなく君宛だ。加えて言うならラブレターを差し出した彼女には「直接渡してください」と断りを入れて受け取っ てすらいない。きっと最後のやり取りまでは見ていなかったんだろう。だからこんなおかしな誤解をしてしまったに違いない。 もし、このおかしな誤解が僕の抱く気持ちと同じ方向性ならどれだけ幸せなんだろうか 小さな考えが頭をよぎり僕は躊躇いがちに尋ねた。 「…どっちがいいですか?」 「あ?」 「『付き合う』と『付き合わない』どちらを言わせたいんですか?」 「はぁ!?」 背後から大きな声と鋭い視線を感じる。 これは拒絶からなのか、驚愕からなのか判断はできないけれど少なくとも好印象ではなかったということが分かる。 「……すみません、なんでもありません」 ばれない様に小さく息を吐いてから謝罪をし鞄をロッカーにしまう。 支度が済んだので先に体育館に向かおうと彼の横を通り過ぎようとしたら腕をつかまれロッカーに押し付けられる。 「ッ…」 ガツンと金属音がぶつかる鈍い音がしたのと背中に受けた衝撃で僕は目を閉じる。 ゆっくりと目を開けると掴まれた腕をそのままロッカーに縫いとめられ、動きを封じられていた。 そのまま顔が近づいてきて僕は彼から視線が逸らせなくなってしまう 「んなの、『付き合わない』に決まってる」 「…そう、ですか」 まっすぐに見つめられて、距離が近くなり瞳の中に自分が見える。 本当にこんな現象おこるんだ、なんて思いながら近すぎる距離にどうしたらいいのか分からず視線を逸らし俯く。 「……ならお前は俺に何を言わせたいんだよ」 「え?」 「人を試すようなことしやがって。ムカツクんだよ、その顔」 「そんなこと言われても…」 「違うだろ」 顎を持ち上げられてまた視線がぶつかる。 後ろに逃げたくても逃げられない。 今、一体何が起きているのか理解ができない――これは、いったいなんだ? 「お前は俺に何を言わせたいんだ?黒子」 「……かがみ、くん…?」 「言えよ、もう隠し切れねぇからな」 「なに、を」 「お前は『付き合う』か『付き合わない』どっちがいいんだ?」 「……そ、れは…どういう…」 「そのまんまだろ。バレバレなんだよ」 「な―――」 なにを、言葉を唇を重ねることで奪われ僕は目を見開く。 そのまま舌が口内に侵入してきて上顎、根元をなぞられ小さく悲鳴を零すがそれもすぐに彼に飲み込まれてしまう。 必死に舌で応戦してみるが唾液がぴちゃりと水音を立てるだけで劣情を煽っていくだけだった。 僕は空いている手で彼の腕にしがみ付きその乱暴な口付けが終わるまで踏ん張っていた。 ようやく、唇が離れていくとお互いに乱れた息を整えるように同じタイミングで息をこぼし、また視線がぶつかった。 「……手馴れていますね」 「うるせぇ…ったく」 お前らしいと小さく零してまた重なる唇。 掴まれていた腕はゆっくりと開放されてそのまま指を絡めてくる。 このままどうにかなってしまうのだろうか?それでもいいかと頭の隅で考えてから僕は冷静に考え直してから隙を突いて耳元で囁く 「練習三倍になりますよ」 「お前なぁ…」 「三倍はさすがに嫌です」 「……わーった、わかった!」 盛大にため息を零してから離れて、そのまま急いで着替えを済ませてロッカーを閉めた。 支度が済んだと判断して今度こそ体育館へ向かおうと足を進めるが、後ろから引き寄せられて阻まれ耳元で囁かれた。 「終わったらな」 そう囁いて彼はそそくさと僕を置いて一人で体育館に向かっていく。 僕はというと囁かれた耳を力いっぱい手のひらで押さえつけて言葉に詰まっていた。 顔が火照るのをなんとか抑えて駆け足で彼を追いかけて隣に並ぶ。 並んだ隙を付いてわき腹に一撃お見舞いしてそのまま追い越していく。 追い越した後ろから「テメェ!」とか「待ちやがれ」とか聞こえたが無視して全力疾走で体育館へ向かった。 全力疾走したら火照った顔を誤魔化せる気がしただけで、決して彼から逃げたわけじゃないと自分に言い聞かせながら。 __________ なんどもなんども告白の場面しかかけない… しかも全部似たり寄ったり!うはー! 次こそは!次こそは!ってなるんだけど どうも本編無視したこと書きたくないらしく… あたふたしてます…精進します… 2012*09*21 |