その日、私たちはフラノールにいた
いつものように雪が降り積もり空は分厚い雲で覆われていて今にも落ちてきそうな圧迫感があった

(うーっ早くもどってあったまりたいよ…)

まだ日の高いとき。
ジーニアスにボトルの補充を頼まれて一緒に買出しにきた
道具屋でボトルのほかにもグミやアイテムも補充して明日の準備は万全だったはずだった
しかし、ひょんなことからリキュールボトル(正確にはお酒)の飲みあいが始まってリフィルやリーガルまでもがつぶれる始末。
一本でも強力なボトルなのにみんなで意地になって飲みあったのだった。
コレットも参加はしたものの、回りのみんなが異様に飲むので少し控えて見守っていた。

おかげで追加の買出しに行くことになった。
先生たちは「明日の朝イチで」といっていたけれど、まだお店が開いている時間だったのでコレットは急いで買出しにむかった。

(あれ?あそこにいるのは・・・)

協会の目の前の踊り場でロイドらしき人物を見つける
遠くてもはっきり見える視力はまだ天使化の影響だろうなと少し寂しい思いをしながらも感謝した

「・・・隣にいるのって、クラトスさん・・・?」

まだ雪がやんでいない冬空の下。
二人はそこで何か会話をしていた。
聴覚のほうは大分なれたおかげで聞きたいときにだけ何でも聞こえる都合のいい耳になった
だからここは耳をすませてはいけないと思った。
二人だけでわざわざ話している。
クラトスのことは色々あったがロイドが警戒していないところをみると信用してもいいと思ったからだ

コレットは足音を消してゆっくりと宿へと向かう。

(・・・・明日、聞いてみようかな)

二人で何話していたの?
そう聞いたら彼は答えてくれるだろうか?
協会から離れていくにしたがって駆け足になった。
そろそろ寒くて指先がじんじんしてきた

「あれ?ゼロス?」

宿屋の入り口のところに彼がいた。
首元に白いマフラーだけを身に着けて

「コレットちゃん?どったのこんな時間に」
「ちょっとね・・・ゼロスはどうして?」
「ん?ちょっと雪が見たくなってな」

町のほうを眺める
ところどころでまだ明かりかついていてそれが雪の影響でぼやけて見える
神秘的で綺麗だった、けれどとても寂しかった印象がのこった
視線をゼロスに戻すといつもの彼とは雰囲気が違っていた

「・・・ゼロス?」
「コレットちゃんはさ、神子に生まれてきてよかったと思ってる?」
「え?」
「・・・なんでもない。うーさみさみぃ」

質問の意味を理解するのに少し遅れたためゼロスはいそいそと自室へと戻ってしまった。
ポツンと残されたコレットはしばらくゼロスが消えていった扉をぼぉっと見つめていた

『神子に生まれてきてよかったと思ってる?』

このときはあまり深く考えなかった。
神子であることに誇りはあったけれど、不満もあった

答えを求めたのに答えられなった自分がひどく卑怯に思えてきたのは救いの塔で彼が私たちを裏切ったあとだった




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まだ続きます
次で終わり
2008 10 22
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