走り続ける夢を見た。
何かに追いかけられて追いつかれて捕まる。
もう逃げられない―――

「―――ゼロス!」
「…ぁ?」

目が覚めると電気の光より先にロイドの顔が飛び込んできた。
必死な形相でゼロスを見る。

「大丈夫か?」
「…」
「あ、ゼロス起きたの?」

ドアの近くにはジーニアスが洗面器と置けをもってそこにいた。

「お前、どうしてここにいるか覚えているか?」
「…なんとなく」

体を起こすと腹の辺りに強い痛みが走る。
あまりにも激しい痛みだったので我慢しきれず、
思わず手を当てて前かがみになった

「おい、無理するな」
「大丈夫…だって…ロイドくん、心配しすぎー…」

力なく笑うとロイドは怒ったのか、眉を顰める。

「寝てろ」

そう一言いい、ゼロスの肩を押してベットに横にさせる。

「ハニー 優しくしてね」
「あのなぁー…」

ふざけた様にいうゼロスに対し、いつものようにあしらうロイド。
ジーニアスは「水替えてくる」と残し、部屋を出た。

「ハニー…」
「ん?」
「キスしてー」
「お前…」

ロイドは少し頬を赤く染め、横目でゼロスを見る。
ゼロスは嬉しそうにいつものように笑ってロイドの名前を呼んだ。
ゼロスは知っている。ロイドは自分がねだっても、
滅多なことがない限り自分からしてこない。
誘うのはいつも自分からだ。求めるのはいつも自分からだ。

「ちぇー…ロイドくんのケチぃー…」
「…」

毛布を口元まで持ってきてふてくされた振りをする。
ロイドは体を拭いただろうと思われるタオル畳み終わり、
近くの台に乗せ、ベットに腰掛けた。

「ロイドくん?」
「……誰がケチだ」
「あ?」

ロイドはゼロスの上に覆いかぶさるかのようにベットに手を置く。

「何何…?この展開…」
「お前が言ったんだろう?」
「……マジ?」
「おおマジ」

ロイドはゆっくりとゼロスの唇に口付ける。
最初は軽く触れただけ。しばらくして離れて、また唇を重ねる。
今度はゼロスの方から舌を絡ませてきた。
ロイドはそれに答えるかのように嫌らしい音を鳴らす。

「ん…っ…ちょ、ロイド…」
「んー?」

唇が離れるとゼロスは恨めしそうな目でロイドを見る。

「エロロイドー…」
「てめ…ッ」
「怪我人相手にするか?普通」
「お前がしろっていったんだろう?」
「…」
「ゼロス?」

ゼロスはかけ布団を被り、黙ってしまう。
ロイドは仕方がないとため息を零し、ゼロスから離えていく。

「ロイド」

布団の中からゼロスが名前を呼ぶ。
呼ばれたロイドは短く返事を返し、畳まれていたタオルをまた手に取る。

「あいしてる」

短く布団の中から声が漏れた。
ロイドは布団を見つめ、ゆっくりと微笑み「ありがと」と一言残して部屋を出て行った。

「……そういう時は『俺も』とか言ってけよ…」

ゼロスは布団の中でもう一度夢を見た。
何かに追いかけられて何かに捕まる夢。
黒い闇の中で誰かに捕まれたのはアイツの手だったと
目が覚めて、二度寝して始めて気づけた。












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ようはラブいんですよ。
死神の手かと思ったらじつは救いの手だったというわかりづらいオチです。
ロイドきゅんは「あいしてる」なんて口にしなさそー
だってねぇ、第七番キライだっていうし。
ま、こんな感じでらぶいのですよこの二人は。
2005*10*28

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