ナルト誕生日おめでとう 今日は朝からついてなかった。 夕べ遅くに長期任務から帰ってきて一休みしようと思ったところにあの五月蝿い子供がやってきた。 自来也様と修行に出て強くなって戻ってきてくれたのは嬉しいが 少しは中身も成長してくれ お騒がせな太陽 「…ナルトー朝ごはん食べるの?」 「食べる!」 朝から元気な金髪小僧は疲れている自分をソファに追いやりのん気に一晩ベッドですごし、目が覚めたらさめたらで「腹減ったってばよ」ってね。 渋々朝食を作ろうかと台所に立ち、鍋に水を張り火に掛ける。その間に長ネギや豆腐を出して味噌汁の準備をして、それが終わったらレトルトのご飯をレンジで温める。 おかずには魚でもと思ったが冷蔵庫には魚はいなく、賞味期限ギリギリの牛肉しかなかったので適当に野菜を刻んで一緒にいためて塩と胡椒で味付けた。 野菜嫌いのあいつは文句を言うだろうがなんだかんだで食べるからそこは気にしないし、もし食べないと言い張っても自分で処理できる量だからなんの問題はない 「カカシ先生ーまだー?」 「はいはい。すぐにできますよ」 顔を洗ってタオルで軽く拭いて残った水気は顔を横に振って飛ばす。 犬じゃないんだからちゃんと拭きなさいと教えたはずだけど「どうせ乾くし」と返された記憶がある。 この金髪小僧は犬よりダメだと認識を改めたのも覚えている。 味噌汁と野菜炒めを皿に盛り付けお盆で机に運ぶ。 アイツはもういつもの特等席に腰掛食事がくるのを待っている。野菜ためをみた瞬間嫌そうな顔をして文句をこぼすが「普段とってないんでしょ」というと拗ねて机にもたれかかる。 レトルトのご飯と冷蔵庫の置くにあった漬物と箸を二膳もっていってようやく席に着く。 「いただきます!」 「いただきます」 年のせいか最近は薄味が好みになってきて味噌汁も散々薄いと文句を言われたこともあった。 自分で味噌汁を啜りながらこっそり相手を気に掛けると普通に呑んでいる。 野菜炒めもピーマンとにんじんをうまく避けつつ食べてるし、冷蔵庫の奥底に眠っていた漬物も何気なく食べている。 3ヶ月賞味期限がきれた牛乳がのめるんだ。 これぐらい問題ないだろと自分は漬物にだけは手を出さなかったのはこいつへの腹いせである。 「ごっそさん!」と勢いよく手を合わせ空になった食器を重ね水どころへ持っていき蛇口をひねる。 食器が水に少しだけ水に浸る音がしてから俺は食べ終わった。 バタバタっと足音が聞こえ空になった食器を持っていく代わりにだいふきを持ってきてこれで机を拭いてくれとばかりまた水どころへ去っていった。 小さく苦笑いをこぼして渋々机を拭いて台所に戻ると慣れない手つきで食器と格闘している金髪小僧がいた。 腕をまくり腕のところどころに洗剤をくっつけがちゃんがちゃんと食器がぶつかる音がする。 「一生懸命なのはいいけど…割らないでよね?」 「わかってるってばよ!」 止めても聞かないのは師匠譲りか、もしくは親譲りか。 そんなことを考えながらだいふきをおいて一人居間に戻った。 十月十日 九尾が現れ里を襲い、四代目火影が命を落とした日 そして うずまきナルトが生まれた日。 毎年、正午すぎから夕方まで慰霊祭が行われ、黒い服を身にまとった里の人々が花を添えていく。 毎年のことだからあの人のために花を一本、そして失われた人のためにたくさんの花を買って添えに行っていた。 あのときの自分を忘れないための戒めもかねて。 でも今年は違う あのバカでおっちょこちょいで目立ちたがり屋の金髪小僧が近くにいる。 同じ班で部下として成長を見守ってきた。 だから今年はその金髪小僧のために花でも買ってやろうかと朝早く起きる予定が、夕べから居座られて買いに行く暇もない。 三代目からスリーマンセルの話を聞いたときにチラっと耳にしたが金髪小僧はこの日は絶対に外に出ないらしい。 だからどうしたものかと考えソファに腰掛けているとふと影を感じて後ろをみると金髪小僧が「洗い終わったってばよ」と笑顔で近づいてきた。 「おりこうさん」 「子ども扱いすんじゃねぇってばよ」 「まだまだ子供でしょ?」 ちぇーっと拗ねながらも隣に腰掛けてきて距離が縮まる。 昔に比べ水分と大きく逞しく成長したなぁと嬉しくなりやさしく髪を撫でてやる。 そうすると最初は不思議そうな顔をするくせに段々恥ずかしくなってきたのか視線を下に落として笑い出す 「何?どうかした?」 「べっつにー?なんでもないってばよ」 ちょっと気持ち悪いよ?と冗談でいうと先生には言われたくないってばなんて生意気な返事が返ってきた。 いたずら心はまだきちんと残っていそうだ。 「ちょっと散歩しない?」 「へ?」 「天気もいいしね」 窓の外は快晴で雲が長くいい秋晴れだった。 風も強くないし頬に当たる風はむしろ心地よい。 「で、でも…」 「ついでに何か買ってあげるよ?何がいい?」 「…」 「本当はこっそり買ってプレゼントしてあげたかったけど、前の日から泊まりに来るし、その前は長期任務だったしね」 「…でも」 「花とか好きでしょ?珍しいの買おう」 「・・・」 よほど外に出たくないらしい すっかりしょげてしまい、視線にいつもの光がない。 前向きに前向きに行き続ける瞳にどれだけ惹かれたか、お前には一生教えないけどさ 「誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとうねナルト」 両手で優しく頬を包み額をあわせて微笑むと我慢の限界だったのか急に涙が溢れ出してきて大泣きされた。 あふれる涙を手で何回も拭って先生と何度も呼ぶから律儀に返事を返し続ける。 「ありがとう、だってばよ…!」 「どういたしまして」 泣き止んだ金髪小僧を連れて花屋に向かいいのと出会いコスモスの鉢植えをもらう。 それでさすがに花はもう、というので団子でも甘いものでもと甘味所に向かうとサクラがいてケーキをくれた。 甘いものもこれでということなのでじゃぁ飲み物でもとスーパーによると紅班がいてたくさんのジュースをおごってくれた。 途中、シカマルとチョウジにも出会いお菓子も袋二つ分もらったので両手にもてなくなり一度俺の家に戻ると、ノックの音が聞こえた。 そこにはヤマトとサイがいて二人から忍具と絵をもらった。 もらったものを机に乗せると以外に量が多くもう机には乗りそうにない。 じっと机の前でそのプレゼントの山を見つめていた金髪小僧に「よかったね」と声を掛けると頬を赤くして照れくさいのを我慢しながらそれでも盛大に微笑んでくれた。 俺はそれがすごく嬉しかった ケーキも花も忍具ももらってしまったので仕方ないで俺は夕食に一楽のラーメンをおごることにした そうしたらイルカ先生もいてアイツ、二人前を綺麗に平らげてありがとうとお礼を言った。 一楽の帰りに二人で散歩がてら遠回りをしながら俺の家へ帰る。 途中公園によって手すり乗り里を見渡して日が沈みかけた空を見つめていた。 オレンジ色に馴染む空を見つめ火影邸で行われている慰霊祭を見る。遠くからではっきりとは見えなかったけどそれでもたくさんの白い花が見えた 今年もたくさんの人が来てたくさんの花を置いていった 今年はいけなかったけれど、その代わりたくさんのものを与えられた気がする。 「なぁカカシ先生」 「ん?」 「四代目ってどんな人だったんだってば?」 「んーそうね…一言で言うなら…お前によく似てるよ」 俺さ俺さ!と手すりから降りてはしゃぐ姿は昔と変わらない。 「ぜってぇ火影になって『四代目はナルトにそっくりだ』って言わせてやる!」 「や、無理でしょうそれは」 「無理じゃないってばよ!俺のほうがすんげぇ火影になるんだってば!んで、誰もが真似したがるようなすんげぇ、すんげぇ火影になってやるってばよ!」 ばかげたことだけどこいつがいうとどうしてか自然と応援したくなる。 わかったわかったと零して頭を撫でてやると嬉しそうに笑ってくれた。 家に戻ってサクラのケーキを食べてジュースを飲んで お菓子も食べつつコスモスの様子を見てその日は二人で同じベッドに寝た。 狭くていやだといったら今日だけと我侭を押し切られ渋々了承した。 朝方、渋々了承した自分を呪った。 この金髪小僧、寝相もひどいわ寝言も歯軋りもするわでまともに寝られなかった。 本当に、朝からついてなかったななんてため息を零しながら次の日になっても思う。 こいつといる限りずっとこの習慣は変わらないだろうと思い寝ている金髪小僧の額を軽く小突いてやった _____________________________ 去年のナルト誕生日に書き上げた作品です カカシ先生好きにプレゼントした作品です 2011*02*09 |