夢を見た
昔と違ってデカくなってようやくあの人に近づけて
これでもう子供扱いされないって思えたのに
あの優しい手のひらが頭の上にくるとまだ子ども扱いされてるって思うのに
それが居心地よくてもっと、って欲張りだす夢
きつく抱きしめて匂いを感じて
すごく幸せだなって思う。

それなのに
突然体を離されてなんで?って顔を覗き込むと俺のほうを見てなくて
どこを?って思って視線を追いかけたらあの人はそっちに歩き出してしまって引きとめようと服をつかんだはずなのに距離はどんどん空いてしまって
あの人―――カカシ先生は俺と同じ金色の髪のやつと幸せそうに、愛しそうに微笑んでいて

掴んだはずの俺の手の中には何もなくて俺はそこで目が覚めた。
目が覚めて手のひらを確認する。俺のこの手ではまだ先生は捕まえられないのかなって。こんなに好きで夢にまで見るのに。

「……カカシ先生…」

手を握りしめて愛しい名前を呼ぶ。あ、やばい・今すぐに会いたい。
俺は身支度を整えて窓から飛び出した。




温度差




今日は天気もよくて2人で里を散歩していた。
先生は俺の話をうんうんと軽い相槌をしながら聞いてくれてるだけだったけど
それでも一緒に隣を歩いて里を散歩した。
太陽がてっぺんに来て「今日はラーメン以外ね」って先手を打たれて渋々先生が好きそうな和食屋に入った。
俺は野菜が苦手だからカツ丼とうどんを頼んで先生は焼き魚定食を頼んだ。
注文するときも「野菜もたべなさいっていつもいってるでしょ」って小言を言われたけどいつものことだから聞かなかったことにした。
そういえば、まだサスケがいたころ。カカシ先生のマスクの下はどうなってるのかって調べようとしたこともあった。
あのムッツリサスケも気になってたらしく七班みんなでカカシ先生に挑戦したけど玉砕だった。――――今思えばなんて無謀だったんだろう。
先生とそういう関係になって先生の素顔をみて男の俺でもやっぱりドキっとしたのは先生には言ってない。

「カカシ先生ってさ、俺のこと好き?」

カツ丼とうどんをたいらげた後、気軽に投げた質問。
俺的にはからかいが返ってくるって思ってたのに、先生から帰ってきたのは気まずい沈黙だった。
あれ。俺なんか変なこときいたか?
だって俺ら付き合ってるよな?つーか俺、カカシ先生から好きって言われたのいつだっけ?あれ、言われたことあったっけ…?俺はしょっちゅう言うし、そういうことしてるときにも結構言ってるけど先生は…―――顔真っ赤にして顔隠して「もうわかってるから」って。あーもうあの先生すんげぇかわいいよな…。でもそう考えると言われたことないかも?あれ、あれ、俺ら付き合ってる?つか先生って―――

ここまで思考して今日みた夢を思い出した。
先生は俺じゃなく、あの金髪のほうに行ってしまったことを
それが何を示しているのかわからなかったがものすごくよくない感じがしてすぐに頭を振って思考をかき消した。

「あ!やっぱなんでもないってばよ!」

ごまかすようにお茶を飲み干して伝票を奪い会計に向かった。
後ろから先生がついてきてるのが分かったけど先生のほうを向けない。
なんで?どうして?困惑するまま今日見た夢とさっきの気まずい沈黙が嫌な予感しかしなくて慌てて店を出て歩き出した。
少し歩いて後ろから声をかけられるがけど振り向けない

「どうしたの?急に」
「別に…」

背中に感じる気配でわかる。先生ってば今すごく面倒だと思ってるに違いない。
小さなため息が聞こえて体に緊張が走る。だめだ、うまく誤魔化さないとじゃないと
―――本当に俺のところからいなくなってしまう

「たださ…先生から好きって聞いたことないなぁー…なんて」

冗談ぽくいってさっさと話を終わらせたかった。「先生が照れ屋だってことはしってるってばよ!」って言って終わらせてさっきみたいに里を当てもなく散歩したい。
それなのに振り返って笑顔を作って先生の様子を伺うとちょっと驚いたような表情で どうしてそんな表情するのか俺にはわかんなくて本音がうまく隠せなかった。

「だ、から、聞きたいなぁーって思っただけだってばよ…」

自分で言ってるのに言葉がとまらなかった。
こんな本音言うはずなかったのに、頭の中ではあの夢が何度もちらついて消しても消しても消えなくて。
顔が上げていられなくなってうつむくと先生からまたため息が聞こえた。
あ、怖い。なんでか分からないけどすごく怖くなって体が硬くなっていった。
すると伸びてきた右手が俺の顎を持ち上げ軽く触れるだけのキスをしてきた。

「これでもだめなの?」
「……もしかして先生の体目当て―――」
「んなわけないでしょ」

先生の手とうを顔面に受けて鼻の頭をさする。
きちんとマスクをずらしてくれたのか左手はマスクを戻してる最中だった。

「大体、体目当てだったら男なんて選ばないよ」
「…それって…?」
「お前がいいんだっていわなきゃわかんない?」

心底あきれられた瞳で見られてから盛大にため息をつかれた。
バカなのは知ってたけど、キスは嬉しいけど俺はキスも欲しいけど言葉も欲しい。
そう思うことは欲張りなことなんだろうか?
それともこれが先生と―――大人と子供の差なのか

「わかったってばよ!」
「全然わかってないでしょ!」

もう頭の中がぐちゃぐちゃで今先生といてもどっちも嫌な思いをするだけだって思ったから俺は逃げ出そうとしたら見事に襟首捕まれて止められる。
ずるい、先生はこうやって俺のこと捕まえるくせに俺は、先生は俺に捕まってくれない!堰きとめていた感情が一気に爆発していく感覚だった

「じゃぁさ!じゃぁさ!四代目火影と俺、どっちが好きなんだってばよ!」
「―――」

溢れた言葉に自分でも少しびっくりして
でもそれよりもショックを受けた。
先生の表情と俺をつかんでいた緩められた手。
俺でも一瞬でわかった、先生は俺を選んでくれないって。
あの夢のとおりになってしまうんだって思うと悔しくて苦しくてもう耐えられなかった。

「カカシ先生の馬鹿ッ!アホゥ!」

緩んだ隙に先生の手を振り払って全速力で逃げ出した。
少しだけ先生が追いかけてまた捕まえてくれるんじゃって思ったけど先生は追いかけてこなかった。








「―――…やってしまった…」


言葉に詰まってしまった…正直、迷った。
逃げていったアイツのほうを追いかけるもなくただ見つめながら自己嫌悪に陥る。
ナルトはあの人の子供で、あの人の子供だから俺が見張りになったようなものだし、どうやってもあの人抜きを考えられない
どちらも大切でどちらかなんて選べない。きっとお前にもそう人がいるだろうに。
何か変なことでも吹き込まれたのか、なんて考えながらも今のは完全に大人である俺のせいだ。子供が我侭を言うのは仕方がないことなのに

「……」

空を見上げながらため息をこぼす。
態度で示しても嫌、言葉が欲しいなんてまだまだガキだな
向こうの頭が冷めるまで少し待つかとナルトが逃げ出した方向とは違う方向に足を進めた。





* * * * * * * * 




「…俺って我侭なのかなぁ…」
「・・・キモッ」

親のお使いの途中で珍しく凹んでいるチームメイトを見つける。
最初はからかってやろうと声をかけたけど、どうやら自分のキャパをオーバーしているらしく今にも泣いてしまうんじゃないかってぐらい情けない顔だった。
ほっとけない性格のせいで甘味屋に誘い、餡蜜を頼んだところで掻い摘んで事情を聞く。そしてさっきの台詞。
凹んでるからとか情けない顔とか関係なく、本気でありえないって思った。

「何らしくないこといってんのよ。てゆーかやることはヤってんでしょ?」
「そう、だけど…」

もじもじしながら視線を逸らす彼を見てホントなんで声かけちゃったんだろう自分!って自分に腹を立てながらも運ばれてきた餡蜜を頬張る。

「私に言わせてもらえば何が不満なのかわっかんないわよ」
「……好きな人にはさ、好きって言われたい…っていうか」
「うっわ、キモッ。果てしなくキモッ」
「サクラちゃん…っ」
「大体!男同士のことなんて私に分かるはずないでしょう?」

男女の関係でさえ全然じゃないけどまだかわらないことばかりなのに!それなにの男 同士のこと相談されても分かるはずないじゃない!てゆーか私もよくこんな話普通に聞けてるわよね…どこぞで耐性でもついたのかしら…
怒りを少し静めるために冷たい餡蜜をまた運ぶ。
よっぽど悩んでいるのか、らしくない彼は机に突っ伏したまま目の前に餡蜜には手をつけてない。
そんな姿をみて可哀想かもとか思ってしまう私も私でどうしようもないと思うけど!思うけど!
私がもし!もしよ?逆の立場でナルトに恋愛相談したとしたら―――

「……」

やばい、いろいろ思い出してしまう。
今はやめておこうと気合を入れなおすため深く息を吸い込む。

「でもまぁ…それ以外は不満はないんでしょう?」
「うん…」
「ばっかじゃないの!?両思いの時点で満足しなさいよ!ナルトのクセに!」

私は両思いにもなれないのに!
最後の言葉だけはなんとか飲み込めて気持ちをまた落ち着かせるために最後の一口をかきこんだ。
さすがにこの状態のナルトに追い討ちをかけたいとは思えない。
アドバイス的なことが何かいえればいいのだけど、本当にこう恋人関係っていうのは 私自身にも未知な部分が多すぎる。
本で知識を得たり、友達と片思いの話はよくするけれど…
両思いになれば当然のように幸せなもんだと思っていたけど、悩みは尽きないみたいだし。

「・・・・言葉は所詮言葉でしょ」

搾り出した答えはあまりにもありきたりすぎて自分でも少し恥ずかしくなる。
こんなことしかいえない自分が情けなく、こんなことを言わせる彼を少し恨めしく思い半ば八つ当たり気味に続ける。

「ようは気持ちが通じてればいいんじゃないの?わかんないけど!」
「・・・サクラちゃん」

それを聞いてようやく上体を起こした彼から餡蜜を奪い取り一気に流し込む。
それを飲み込んで伝票を叩きつけてお使いの荷物を取り席を立つ。
帰り際に「感謝してんならおごりなさい」って捨て台詞を吐いて店を先に出た。
あーあ。本当に面倒な人たち!
面倒でもどうしても大切だと思ってしまう人たち

「あたしって本当にお人よしなんだから」

ふと思い出す
あ、そういえばお使いのものって生もだった気がする。早く帰らないとまたうるさいかも
少し傾いた太陽を手のひらでかざして見て軽い足取りで家路につく。




* * * * * * * * 



陽が傾きもう間もなく沈んでしまうだろうという夕刻。
時間をつぶすために火影岩を眺めていた。
正確には四代目火影岩。喧嘩の原因にもなったアイツの父親
俺も少し頭に血が上っていたのかもしれない、時間が経つにつれて考え方が変わっていく。
あぁ、あの子に会いたいな

「…―――」
「カカシ先生!」

探しに行こうか迷っているとちょうどよく声が聞こえた。
視線をやるとあの子が走ってこちらに向かってくる。

「こんなところで何―――」

さっきまで俺が見ていた視線の先を見つめた後、言葉を詰まらせた。
そりゃそうだろうよ。今日の喧嘩の原因なんだし
あの子は顔岩を見つめたまま悲しそうな表情をする。
眉尻が下がって唇を硬く閉じて泣くのを我慢している幼い子供みたいだ
俺はその固く閉ざされた唇が開かないうちに伝えなければならないことがある

「さっきの質問なんだけど」

静かに顔をこちらに向けてきた。
何を言われるんだろうとあの青い瞳は不安でゆれている。
これはもしかして、こいつも何か伝えたいことができたのか。
その伝えたいことがきっと俺を理解してくれる言葉なんだろうと予想がつく―――『俺ってばまだまだガキだったよな!』とか『言葉がなくても先生は俺のこと好きだもんな』とか。
でも今回ばかりはそれを言わせるわけにはいかない

「あの人は俺の先生でもある前に尊敬する大切な人なんだ。俺だけじゃない、この里の者にとってあの人は――――四代目火影は大切な人なんだよ」
「・・・」
「だから誰かと比べたりは絶対にできない」

暗くなった表情と一緒に視線もどんどん下を向いていく。
何か言いたいのか硬く閉ざされた唇が隙間を作る。
でもまだ、俺が伝えなきゃいけないことは伝え切れてない

「でも、―――」

距離を縮め引き寄せて唇を重ねる。
最初は触れるだけの短いキス。そのまま驚いた表情のあの子にもう一度口付ける。
空いた隙間から舌を忍ばせて絡ませて引き寄せる。
あの子は一瞬体を硬くさせたが、すぐに腕を背中に回してきて強く、強くしがみついてくる。

「俺がこうしたいって思うのはお前だけ。好きだよ、ナルト」

唇が離れた一瞬をついて額をあわせて囁いた。
あの子は俺の予想通り顔を真っ赤にして息を詰まらせてた。
そんな表情も可愛くて愛おしく思える。
夕日に照らされた金色の髪を優しく撫でると恥ずかしいのか俯いたまま体をあわせて表情を隠してきた。
もちろんこれも想定内。あの子の顔がこちらを向かないように優しく抱きしめる

「ごめんね、少し怠けてたかもしれない」
「なまけ?」
「『ナルトは俺が好き』っていう気持ちにきちんとお前が求める形で応えてあげられてなかったなって」
「・・・・・」
「四代目とは比べられないけど、俺はあの人の息子だからじゃなく、お前がお前だから好きだよ」

大人になると怠け癖がどんどんついてきてどんどん楽なことしかしたくなくなる。
けど、そんなのあの子に分かるはずがない。
だってあの子はいつでも全力で前向きでそんなお前だから惹かれていったのに―――そのことを思い出したはいいがやはり正面きっては伝えるのは照れくさい。
だから唇を塞いで主導権を握ってしまう。そうすればあの子は俺にされるがままになるはずだ―――結果は見事にうまくいったけど

けど俺は一番欲しかったものが手に入った子供が浮かれてはしゃぐのをすっかり忘れていた。
強く抱きしめられたあと、追い詰められて唇を奪われる。
角度を変えて何度も舌を絡めて呼吸ができなくなるぐらい熱く、長い口付けで
ようやく開放されたと乱れた息を整えてたらまっすぐな青い瞳に打ち抜かれて―――
あぁ、もう本当にそっくりだなぁなんて思って笑いがこぼれた。

「……先生」
「ん?」

首に手を回して抱きしめてくる。
どうした?と頭を撫でてると小さな声で「子供でごめん。大好き」と聞こえててまた笑いがこぼれた















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友人に謙譲したナルトとカカシのお話。
ちょうど9作目の映画見終えた後だから若干サクラちゃん大めw

2012*08*15








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