「おーい ピーチパイが焼けたぞぉ」 おいしくないピーチパイ 本日はあのユリスを倒して一年たったペトナジャンカン。 ティトレイの提案で例のメンバー集まって久しぶりにお互いのことについて話でもしようと場が設けられた。 しかし、アニーは医者としての仕事が忙しくこれない。 ヒルダも孤児院なんか手伝っちゃって会いにこれないそうだ。 よって、今ペトナジャンカに集まっているメンバーはヴェイグとクレア。 それにマオとユージーンだ。 一年たった今、周りの状況が少しづついい方向に向かってきている。 ティトレイもこの一年多くのもの関わり、助け合い生きてきた。 そして、姉貴・セレーナの手を借りて、あの「ピーチパイ」にも磨きをかけた。 「うっわぁ〜…おいしそう」 「だろだろう?今回はちぃっとばかし自信作っ」 「・・・・」 「ティトレイ!早く早くっ」 「はいはい」 ティトレイはパイに切れ目を入れてゆき、一つ一つ皿に乗せてゆく。 「ヴェイグ、食べるだろう?てかお前が食べないと美味いかどうかわかんねぇしさ」 「あ、あぁ…」 そして皆に配り終えたところで、ティトレイはヴェイグの隣に腰を下ろす。 ヴェイグは相変わらず無愛想で、とっつきにくそうな顔をしている。 一緒にきたクレアはパイを皆に配るのを手伝い、セレーナのところで一緒にお茶を飲みながら会話を交わしている。 もちろん、ピーチパイにも手をつけながら。 「あーっ!ティトレイ!ヴェイグのほうがちょっと大きくない?」 「あ?そうか?」 「ズッルーイ!!ヒイキだっ差別だぁーっ」 「ったく…これだからお子ちゃまは…」 「ティトレイだっておこちゃまでしょ!?」 「ぬぁにをぉ!?」 久しぶりにマオとじゃれあい、ティトレイは調子に乗る。 マオは一年前にくらべて多少は伸びたものの、まだティトレイには及ばず。 ユージーンもマオを止めにかかるが、久しぶりのこの会話に懐かしさが生まれる。 ヴェイグはそんな彼らを見守り、ゆっくりとピーチパイを口に運ぶ。 口に入れ、噛み締めた途端、サクッと歯切れのいい音がする。果実の桃も剥きたてのようにとても新鮮だった。 ポプラおばさんのピーチパイにとても似ている。とても美味しい。 「…」 ヴェイグはマオとティトレイのやり取りを見守りながらそんなこと思った。 思ったついでになにやら腹が立ってきた。 せっかくここまできたのに、ティトレイは自分には構ってくれない。マオとばかり楽しそうに笑う。 むかついたからヴェイグはわざといってやった。 「・・・まずい」 「「え」」 「まずい」 その場に沈黙が流れ、クレアも心配そうにヴェイグを見つめた。 ティトレイはマオをじゃれあうのをやめ、急に大人しくなる。 「……そ、そっか…わりぃな。まずいもの食わせちまって…」 ティトレイはヴェイグからピーチパイを奪い、すぐさま一歩下がってしまった。 「…」 じっとヴェイグから受けとったピーチパイを見つめ、一人で脳内反省会を開くティトレイ。 どこがまずいのだろう? 生地も最高にうまくいった、と思っていた。 果実の方だってこんなにも新鮮で、と思っていた。 全部思い込みだったのかもしれない。 「おいしくないの?コレ…」 すると、後からマオがひょこっと顔を出し、ヴェイグから奪い取ったピーチパイを眺める。 「そ、そうらしい…俺、調味料間違えたかも…」 「ティトレイー?きのこは入ってなでしょうね?」 「おまえなぁ…ピーチパイにどうやってきのこ入れるんだよ。」 マオの一言でなんとか雰囲気は取り戻せたが、ティトレイはどこかぎこちなかった。 ++++++++++++ 夜。 本日はペトナジャンカにお泊り。 正確にはヴェイグとマオはティトレイのおうちで。クレアとセレーナはセレーナの親友の家へ。 あとはまだ夜は浅い。酒場に行ったり、賭博をしにいったりとまぁ色々で、ティトレイの家には今三人しかいないのだった。 「ねぇヴェイグ…さっきのはちょぉっといいすぎなじゃない?」 ヴェイグは椅子に腰かけ、読書中。 マオはベットに横になりながらヴェイグのほうを見る。 「さっきの?」 「ほらっティトレイの作ったピーチパイ」 「・・・・」 「ね?いいすぎでしょ?」 「……かもな。」 「ティトレイ、頑張っておいしいの作ろうって努力してんだからさぁ…少しは認めてあげようよう?ネ?」 さすがにあんな風になるとは思っていなかったヴェイグ。 やりすぎた、と後悔していた。 「…マオ、ティトレイは?」 「まだ厨房。」 「いってくる。」 「はいよぉー」 ヴェイグは部屋を出て、ティトレイのいる厨房へと向かった。 …多少駆け足で。 ++++++++++++++ 「ティトレイ、いるか?」 厨房に入るとやたら甘い匂いが広がっていた。 これは、桃の香り。しかも香ばしい生地の匂いも。 ピーチパイが出来上がってからもうずいぶんと時間がたつのに、まだ匂いがこもっているのか?不思議に思った。 ヴェイグがティトレイを呼んでも反応なし。 中に入り、奥まで進む。 物陰にティトレイの足が見え、名前を呼びながら覗き込んだ。 「・・・・ティトレイ?」 そこにはつかれ切って、寝ているティトレイがいた。 さすがにここで寝るのはまずいだろう、と思ってヴェイグはティトレイを起こす。 「こんなところで寝ると風邪引くぞ。」 「…そうだな。」 ティトレイは立ち上がり、あくびを漏らす。 そこへ、ヴェイグがティトレイに向かっていった。 「ティトレイ、さっきは悪かったな。」 「あ?」 「…ピーチパイそこまでまずくはなかった。」 「んだよ。マオにいわれて謝りにきたって感じだぜ?」 「・・・」 「いいんだよ。まずかったらまずいっていってくれれば。」 ティトレイはまな板のほうを向き、ゆっくりと調理器具を片していく。 片しながらも言葉を続けて。 「料理って食べる奴によって味の感覚が様々だからな。美味かったり、まずかったり。それは人の好みだ。」 そして、ヴェイグのほうを向き、ティトレイは微笑んだ。 「だから、別にお前が気にすることじゃねぇよ」 「・・・」 「っし!さっさと片付けて部屋に戻るぞぉー」 「ティトレイ」 「あん?なんっ!?」 ヴェイグはティトレイを前から抱え込む形で、目の前に立ち房がり、キスをする。 「んぅっ…」 ヴェイグはところどころ角度をかえ、何度も舌を這わせる。ティトレイの口から呼吸をしようと時々声が漏れる。 しばらくして、やっと口が開放されたティトレイはのなにやらぼぉっとしてしまっている。 頬も赤めて、ヴェイグほうを上目遣いで見上げる。 「・・・ヴェイグ…?」 「確かに、味の感覚は人によりけりだな。」 「・・・?」 「お前は甘くて美味しい。」 「んっ…」 ヴェイグはティトレイの手に触れ、再びキスをした。 深く、何度も角度を変えて。今度はティレイもトその気になったのか、ヴェイグの舌にあわせてティトレイも舌を這わせた。 厨房にはくちゅくちゅといやらしい音が響く。 「・・・変態」 「なんとでも」 「ぁ…っ」 ヴェイグはティトレイの首筋に舌を這わせ、時々甘噛みするようにいやらしい音を発していった。 ヴェイグの調理メモ。 ○月×日 今日のティトレイはピーチの味がした。 アイツのことだ。きっと俺に「まずい」といわれ、いくつも作り直したんだろう。 可愛い奴だ。これだからからかいがいがある。 オワリ+++ あとがき え?なんですかってなんですか? 続きはないですよ?(多分) うちのティト負けず嫌いで根性ありますから。アタシとちがってVV もうかわいいねぇvv アニーの日記、ティトレイの日記ときたら、ヴェイグのも、っと思って最後のおちはこうなりました。 多分、「調理メモ」とか書いてあるくせにティトレイのことしか書いてませんから。(うわぁ 変態 2005*05*04 |